白旗太郎
@jidjizudzu
第1話
戦うことが嫌いだ。いつも白旗を挙げる。勉強のはずが勝ち負けばかりに気を取られる。会話の中でもマウント合戦を気にする。
母との会話はとくにその傾向が強い。
わたしが話をした時、あまり話を聞いてくれず、母の話が始まる。母には悪気がない。それが厄介なのだ。私はただ相槌を打って共感してほしいだけなのに。私が経験した辛い出来事よりもさらに辛いものを話してくる。辛い話はどこにでもあるのはわかっている。ただ聞いてほしいだけ。
今までのことを思い出すとちゃんと話を聞いてもらったという体験は少ない。自己開示が苦手だったのもあるが、相槌一つ、返事ひとつで聞いてくれてないように感じてしまう。私自身がそうしてしまうことがあるため、なんとも言えないが、されると怖くなるのだ。
話を聞くことが煩わしいのではないか、つまらないのではないかと。そうやって一人反省会をする。その時の会話を思い出して辛くなる。結局、私はマウントをとるような会話をしてしまうのだ。そういった会話を経験してきたから。言い訳と言われればそうだ。
こうやって言い訳をして白旗を上げる。他人と比べてばかりの人生。上には上がいることなんてわかっているのに。何度もなんども繰り返す。比べることに思考が支配される。学歴主義に成長主義。どうしてこうも繰り返すのだろう。そこに価値があると妄想的になってしまう。価値がないことは頭の片隅でわかっているのに、大半は私にないものを欲している。
欲するけども努力することが辛く、進むことが怖い。結局、失敗という未来を予知してしまうのだ。今までの体験上、成功したと確信を得て、達成感を味わったことがほとんどない。あるにはあるが、成功体験という感覚よりも、できて当たり前と感じてしまう。なぜなら、周りの人ができているから。周りの人ができていない時に初めて達成感を感じるのかもしれない。優越感に浸りたいのだろう。達成感=優越感ではないはずだ。だか、できて当たり前思考に侵される。
塾でのことを思い出した。塾で褒められた体験がない。先生は何でできないのか、なぜ何回もミスをするのかと問いただすだけだった。私は機械だった。正確な回答ができず、故障した機械。劣等感だけを増幅させて、他者に優越感を与えるための壊れた機械。当たり前のことができず、笑いものにされた。まじめにしようとしてもできないのだ。のび太だった。笑ってくるやつが憎かった。友達に教えてもらおうともしなかった。できない自分を自覚するのがいやだったから。
白旗を。白旗を掲げろぉ!
白旗太郎 @jidjizudzu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。白旗太郎の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。