EP3 桜並木の祝い
平日の登校時間は8:00。それに対して目覚めて身支度も全て完了している現在時刻は6:30。学校までの道のりは自転車で20分程度…今から出たら到着が6:50分か。早いな。
さて、どうしたものか。大体普段は7:40をめがけて朝起きて、身支度をして登校するのだが、本当に今日は早く起きすぎた。まさか年度始めの入学式の日の朝にこんな悩まされるとは思いもしなかった………ん?そうか、今日は入学式だ。入学式と始業式とあと新しいクラスでのホームルームくらいしか今日はないはずだ…授業がないから重い荷物でもない。だったら、歩くという手段もあるな。よし、今日は歩いて登校しよう。
茶色のリュックサックを背負って俺は遺影に向かって行ってきますと一声かけてから玄関にむかい、スニーカーを履きドアを開けて外に出たら、朝方の張り気味の空気を感じた。なんだか清々しい気持ちになれた気がする。俺はそのまま歩き出した。
歩いてから約5分ほど経つと、大きな公園の並木道路に入った。ここは四季の移り変わりが目でよく見える。夏は蝉の声や新緑が、秋は紅葉や
桜は大抵四から五月に咲く。毎年毎年その一瞬だけ輝きを見せる。決められた時期に出てきて、周りを釘付けにして、そしてすぐに帰っていく。その時はもう、他の花なんて人にとっては眼中にないのかもしれない。桜は花の世界におけるトップスターなのだろうか。とにかく俺には桜は輝くスターに見える。
そういえばこの時期は、入学、進学、入社、といったおめでたいことが多い気がする。また、こういうおめおめしい出来事と桜はよく似合う。もしかしたら桜は彼らを祝っているのだろうか。または彼らの新しい門出の出発に似合う演出をつけようとしているという考えもできる。いや、さっきのトップスター仮説で行くなら、そんなの関係なくただただ目立ちたいだけなのかもしれない。
でも本当に桜が彼らの門出を祝ってのものなのだったら、とても風流な花だと思う。俺は割とこのこっちの仮説のほうが好きだ。桜はきっと風流なことをしたがる、平安貴族のような花なんだと、俺は勝手に思っていたいな。まあ、祝うとしていても、桜自体が何に対して祝っているかは、一切わからない。祝うべきものの価値観ってのは人それぞれだから。だから、桜や他人と相容れないことだって仕方のないことなんだ。
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