第15話 田中さん

シーン

相変わらず辺りは静かだ……

そして、この場にいるのも私達だけ……

やはり……


「つんちゃん、暗くなってき「さっきから、うるさいですよ?“ノックは四回”って決めてるはずなんですけど?」

「「え」」

さっきまで、いなかったはずなのに、同じくらいの歳くらいの少年が4番目の個室のトイレの壁に寄りかかっている……


少年の服装は袴で銀プチの眼鏡をつけていて、瞳の色は紅色だ……まるで大正時代のような格好……

多分この人が……噂の田中さんなんだろう……

「マジでいたのか……」

「……お客さんですか…要件はなんですか?」 

「要件?」

「そうです、要件です、用があるから来たんでしょう?……まさか“何となく”きた訳ではないですよね?」

田中さんは不機嫌そうに顔を顰めながら聞いてきた。

……そこまで、正直考えてなかった。ただ、この“噂”が安全なのか知りたかっただけだから“要件”などない……

どうしよう……

「要件は……特にないな」

それ、正直に言っちゃうの!?

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