第4話
「卒業アルバムか、それ」
紺色のスウェード生地に『2013
「そう! 休憩がてら見ようよ」
「さっきまで未来の話をしてたのに、過去を振り返るのか」
「そ、それはいいでしょ! これからに迷ったら過去を振り返って初心を思い出すのもきっと大事だよ」
私はどこかで聞いたことある言葉をそっくりそのまま
「まぁ
「爽玖っていつもいつも一言多いよね……」
今度は私が爽玖の隣に座り、私と爽玖の太ももの間にアルバムを開く。
最初に目に飛び込んできたのは校庭で6年生全員で撮った写真。
「うわー懐かしいな」
「ね! 2年ちょっと前なのにもうすでに懐かしいんだけど!」
卒業アルバムってどうしてこんなに盛り上がれるんだろう。
成人式の二次会とかで皆と見たらもっともっと盛り上がるのかな。
なんか楽しみになってきた。
成人式5年後だけど。
ページをめくる。
6年1組の授業中の様子や給食の時間の写真が並んでいる。
私と爽玖は6年生のときだけ同じクラスになれた。ちなみに中3でも同じクラス。
最終学年だと同じクラスになる魔法でもかかっているのだろうか。
「うわ。私が爽玖に教えてもらってる写真ある」
「うわってなんだ。うわって。この頃から変わってないんだな」
私が机に座ったまま、爽玖が先生のように私に覆いかぶさるような姿勢で教えている。
――だからここは
――なるほど……だからこう繋がるんだ。
――そういうこと。
――ありがと、爽玖!
――ん。
――爽玖って教えるの上手いよね。先生にでもなっちゃったらいいのに。というかなりなよ! 爽玖にぴったりだよ!
――……
「これ実は私が爽玖に勉強教えてる説ない?」
「なわけないだろ。俺が瑠菜から勉強を教えてもらった記憶なんてないぞ」
うん。私にもそんな記憶ない。
ページをめくる。
「花山なー。めちゃくちゃ動き回った思い出しかない」
「いやいや、爽玖と花山といえば沢登りでしょ!」
沢登りは体操着にライフジャケットを着用して、沢や滝を登っていく。
途中に高い場所から水深が深いところへ飛び降りる場所があり、そこはとても人気だった。
――もうっ! どんと思いっきり飛び込みなって!
――う、うるさいな。タイミングってもんがあるんだよ。
――タイミングって……。もう結構並んでるよ?
―― ……
――えいっ!
――あ、お、瑠菜!
「俺は忘れてないぞ。瑠菜に押されたこと……」
「あはは! だって爽玖が全然飛び込まないでビビってるからさー。私なりの優しさ!」
爽玖は基本運動神経良いけど、水泳だけはてんでダメ。
ページをめくる。
運動会。
私と爽玖はクラスの代表としてリレーの選手を任された。
結果は優勝。
「瑠奈が優勝トロフィー受け取ってる瞬間を撮ってるから俺の顔隠れてるやつじゃん」
「それは爽玖が賞状をもらって下向いてるからでしょ! 私のせいにしないで」
――爽玖!!
――あとは任せろ!!
「『あとは任せろ!』とか言ってバトンもらったくせに後ろチラチラ見ながら走ってたよね」
「ぐっ、それは本当だから否定できない……でも、1位のままゴールしたから」
「私たちが2位以下とそれまでに差をつけてたことをお忘れなく」
ページをめくればとめどなく爽玖との思い出が鮮明に蘇る。
それをこうやって笑いながら共有できるのは――私たちがいつも一緒にいたから。
お互い違う高校に進学したら、こうやって思い出を一緒に作ることもできなくて、2人で振り返ることもできない。
いつかやってくるその未来に背を向けたくて、私はページをめくる。
過去を見ていれば、未来を見る必要はないから。
ページをめくるのを止めるように急に私の右手を爽玖の右手が覆う。
「瑠菜、次は文集読もう」
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