After 10 years~Winter
―――最初からこうなることが、決まってたみたいに…
冬美「…ミカエルさん。もう、私達のことは関係なくなりますね。二度と。さようなら」
彼女は室内から出た。アルエルがどこに行ったか確認した。歩くように、急ぐように。そして発見した
アルエルは廊下の窓から何かを見るように立っていた。冬美は彼女に話しかける
冬美「アルエル…」
冬美がそう言うとアルエルは冬美のほうに向いて反応した。しかし、その顔は笑顔であった。無理をしてないだろうか?
アルエル「…冬美、これでようやく2人きりになれたわね」
冬美「アルエル…いいの?追放よ?貴女にとって一番良くないことじゃない」
そう言うとアルエルはまだ笑顔でいた
アルエル「もういいのよ。私は天使協会を好きでいなかったし。それに、君がいてくれる。それだけで一番の幸せなのよ」
冬美「…」
冬美は何も返す返事が無かった。追放されるとはいえこんな穏やかにいられるなんて…アルエルは鉄の心を持っているのだろうか
いや…違う。ただ冬美と共に歩みたいと思っているのだろう。冬美とアルエルは既に相思相愛になっているのだから…
彼女にどう言おうか。だが、あまりひねくれたことを言わなくていい。私達は一緒にいられることができる。それだけだ
考えてたらアルエルは冬美のほうに向き、すっと手を掴んだ
アルエル「これからも…ずっと…君と共に、人生を歩みたいわ…」
冬美「…わかったわアルエル、ずっとよろしくね」
そう言うと冬美もアルエルの手を掴んだ。こうして2人は幸せな人生を送ることが決まった
「…社長。社長」
冬美ははっとした。いかん、寝てしまっただろうか。あまり疲れてないのにすっかり居眠りしてしまった
ここは冬美が経営してるオフィス。築数年経ってない新しいビルに冬美を社長にしてブランド経営をしていた
彼女は大学を卒業後、会社を立ち上げて主にグッズやコスメなどと言った小物類を売る会社となっていた
その小物類はとても人気となり今では様々な他の会社がこぞって冬美の会社の経営を携わりたいと名乗っていた
結果、10年のうちに「河合ブランド」と呼ばれる人気の小物類となった。そして今でも提携と言ったこともある
また冬美自身がアルエルとの出会いと結婚まで書かれた本を出し、これも全世界の本屋にあるほど売上が伸びている
元々天使とは実は難しい種族なのだが冬美とアルエルの話は誰もが憧れるような、そんな2人となっている
印税も入るし黒字経営で全世界で「河合ブランド」が注目されるようになった。冬美は10年で素晴らしい社長となっていた
アルエルは副社長、という形で会社に携わる。もちろん彼女自身も経営に関わる仕事をしていた
しかしアルエルは天使協会に関わるものは断じて拒否をしていてそこは冬美もしっかりわかってはいた
そんな「河合ブランド」の社長、冬美。今日はなんだか寝ぼけていたのか少しだけうつむいて寝てしまっていた
社員の顔を見て慌ててしっかりした。そして社員の顔を見た
冬美「ご、ごめんね。ちょっと寝ちゃった…」
そうは言うが社員のほうはあまり気にしてなかった
社員「大丈夫ですよ社長。ところでまた提携したいという会社がいてさっき電話で応対してたんですよ」
おお。またか。冬美は明るい表情だった
冬美「そう?どこの国かしら?」
社員「はい。ヒダンゲの会社です。今すぐにでもその会社に通じることができますが、どうしましょう?」
冬美の返事はひとつだった
冬美「すぐに通しなさい。私がやるから」
社員「わかりました。では、すぐにお繋ぎいたします」
そう言うと冬美は他の会社の応対をしていた
冬美「…はい、ではこちらこそよろしくおねがいします。お互い上手くいきましょう」
冬美はビデオ通話は終えてふーと一息した。ヒダンゲは行ったことないが恐らく田舎と言われる国なので小物類などがほしいのだろう
社長である冬美はちらっとこのオフィスの周りを見た。相変わらず電話の対応だったり書類関係をまとめてたり色々だ
実はこの社員達の一部は天使だったりする。もちろん、アルエルに関係した社員だ。全員元天使協会のスタッフだった
実際アルエルが天使協会を離れたとき、ある程度のスタッフはその追放に反対した天使が一部いた
そして冬美が会社を立ち上げたときに追放に反発した天使達がアルエルに着いていき冬美の社員になったことがある
それゆえ冬美の会社は天使に支えられてるという不思議な会社となっている。冬美は元スタッフを丁重に扱いをした
現在は色々な種族のいる会社となる。どの社員もよく働いてくれるため冬美はほとんど困らずに会社を経営できるようになった
ふと、冬美は時計を見た。もうそろそろアルエルが帰ってくるはずだが…
そんなことを思っていたら会社の玄関のドアが開いた。冬美の妻であり営業担当の副社長、河合アルエルの姿がいた
アルエルは冬美の顔を見るとすぐに駆け寄り、社長の机まで来た
アルエル「ただいま冬美!」
こんな会社内だがアルエルは社長とは呼ばず冬美と言う。しかしそれは冬美がそうしたいと言われたのでそうしてる
冬美「おかえりアルエル。どう?どこか提携できる会社があった?」
冬美がそう言うとアルエルは笑顔で言う
アルエル「あのね。河合ブランドがもっと分かってもらいたいって言ってその会社の営業担当に話したんだけど…。
ぜひとも話し合ってみたいという会社があったわ!後日伺いますって!」
そう言うとアルエルはニコニコしながら冬美に結果報告を言っていた
冬美「よかった。アルエル、貴女は立派な営業担当よ。やっぱり天使だから違うのかしらね」
アルエル「んもー!冬美ったら!天使なんて関係ないわ!私の器量なのよ」
アルエルがそう言うとぐっと腕を曲げて力こぶポーズをとった
冬美「あはは!そうだったわね。うん、ご苦労さま。休んでいいわよ」
アルエル「うん!」
アルエルは自分の机に戻った
これからまだまだ提携やコラボをしてくれる会社がいるとなると楽しみになっていく。会社が上向き始めた証拠だ
そしてどんどん注目されよう。アルエルのためにも、着いてきてくれた社員にも、冬美はさらなる決心をした
一方座ってるアルエルの机に部下が来た。この人はアルエルに着いていった天使であった
社員「アルエル様」
アルエル「私に何か用?」
そう言うと社員は真面目な顔で言う
社員「私達、天使協会から離脱してアルエル様に着いていったことを心から嬉しく思っています」
アルエルはその言葉を聞くと笑顔になる
アルエル「ううん。君達のとった行動は私は嬉しいわよ。だってこんな働きやすい会社なんだから。もう天使協会関係無いしね」
社員「そうでした。あまり天使協会のことは言わないほうがいいですよね」
そう言われるとアルエルは決して嫌な顔をせず答える
アルエル「たまーに…天使協会のこと思いだしちゃうけど…。うふふ、今が一番ならそれでいいのよ。君もそうでしょ?」
アルエルは社員の顔に向けて言う
社員「はい。当然です。アルエル様、そして社長…とても良い環境で居られるのは嬉しいことです」
アルエルは元々敬語を言う人物だったが今は敬語をほとんど言わない人になった。営業してるときは得意の敬語を使うが…
元天使協会スタッフの社員は思った。ああ、娘様はこんなに変わったんだな。追放されても決して嫌にならずにいた。そんな存在が
だからこそ着いていった。ただそれだけである
アルエル「君も私の奥さんにキッチリ着いてきなさい」
社員「はい!アルエル様!」
そう言うと社員は戻った。アルエルは指にある指輪を見た。愛してる冬美との結婚。ずっと幸せに思っている
もしかしたら冬美の自伝を読んで他の人も同じような結婚をしたカップルがいるかもしれない。それも嬉しい話である
アルエルは冬美のほうに向いた。相変わらず冬美はパソコンに集中してる。提携する会社などを見ているのだろう
そうだ。今仕事に集中してるが冬美の自伝をエゴサしてみよう。良い反応があるかも?アルエルはパソコンで調べる
アルエル「『私と天使の物語』と…。おー…評判いいみたい…コメントでこの本を読んで結婚しましたなんて人がいる…。
4つの国の他に、ジパング、リュウキュウ、シンリィヌ、アメジア、サフィーラなどなど…色々な国に本があるのね…。
コメント欄でジパングの人で私達の愛の物語に影響されて結婚した人もいるんだ…。コメントの人は龍人と妖怪…。いいわね…」
ここまで見てそろそろやめることにした
アルエル「うん…幸せよ私…。だってここまで祝福されているのだもの…」
そう思うとアルエルは少しだけ目頭が熱くなる。私達のやったことは間違いではない。それだけで幸せなことはない
帰りの集会。今日は特別残業をする必要はない。なにせ部下達が優秀だからだ
冬美「…というわけでみんな。明日もよろしくね」
社員「はい!社長!」
そう言うと社員達が帰りの支度をする。冬美もアルエルも当然帰りの支度をする
アルエルは整えると冬美に近寄る
アルエル「冬美。今日は何食べよう?」
冬美「そうね。野菜をふんだんに使った料理にしましょう」
アルエル「うん!」
冬美とアルエルはオフィスを出た。その光景を見た部下が思い思いのことを言う
社員1「相変わらず幸せそうな2人だなあ…」
社員2「だってあのひと達結婚してるしな」
社員1「河合社長もアルエル様もとても良い人だしね」
社員2「だからこそこの会社はホワイト会社で私達も働きやすい環境だからね」
社員1「ほんと…着いてきて正解だった」
社員2「若干ブラックだった総本山とは大違いだよ」
社員同士がつぶやくように話していた
冬美とアルエルは自宅へと着く。既に一軒家がある2人の家。それを幸せに思わないわけはない
2人が仲良く玄関のドアを開けて入る。2人で住むにはちょうどいい家。愛の巣であった
靴を脱ぎ、リビングへと向かう。アルエルは早速リビングにあるふかふかソファに座る
アルエル「冬美!」
そう言うとアルエルは隣の席をポンポンと叩いた
冬美「わかったわ」
冬美は荷物を置くとアルエルの隣に座る。そしたらアルエルはひっついて冬美の側に行く
冬美「数年変わらず甘えん坊ね貴女」
アルエル「だって冬美の側にいたいから!」
冬美「うふふ…いいわよ」
冬美とアルエルは抱き合いながらソファに座っていた
ユキノウエはそろそろ春だ。しかし相変わらず雪が残っている。雪解けはまだ当分先だろう
そんなこと思ってたら冬美のスマホから着信音が鳴る。だれだ?イチャイチャしてるのに…
見たら冬美とアルエルの元同期の人からの着信だった。荒木ユウだった。冬美は話そうとする
大学仲間の3人とは絶縁したがユウだけはバイト仲間という理由で絶縁しようとは思わなかった
だからこうしてたまに連絡を取って会話をしてる。もちろんアルエルも分かっている
冬美「ユウ?久しぶりね」
ユウ「冬美久しぶり~!アルエルちゃんとは仲良くしてる?」
冬美「ええ。仲良くしてるし会社も上手くいってるわ。…ところで貴女、アマリリスにいるって聞いたけど?」
ユウ「そうだよ~。勤めてる会社のもうひとつがアマリリスにあってね。転勤してアタシ今アマリリスにいるんだ!とても良い環境で良かったよ~」
冬美「良かったわね。悪魔だから暑い場所好きでしょ?」
ユウ「うん!ユキノウエは悪くなかったけどやっぱり暑いとこが最高だね!おまけに総本山にも行けて嬉しかったよ!」
冬美「悪魔協会でしょ?総本山の祝福してくれたの?」
ユウ「もちろん!これでアタシも立派な悪魔の一員!低位でもちゃんとしてくれて嬉しい!このままアマリリスにいようかと思ってんだ!」
冬美「貴女は悪魔だからね。アマリリスにずっといるならそうしなさい」
ユウ「当たり前さ!アークデーモン様良い人だしヴァンパイアロード様とても明るいし…あ、でも悪魔協会に絡んでる人間がいたね」
冬美「絡んでる人間?」
ユウ「うん。塩谷光さんっていうんだけど…あの人人間なのに悪魔協会の母だなんて言われる人だね。その人も明るい人だけど」
冬美「光?あら。その人ネトゲでお世話になった人だわ。ライトって名前だったけど後で本名も聞いてくれてね。悪魔協会の一員になってたんだ」
ユウ「そうなんだ?アークデーモン様とヴァンパイアロード様とすごい仲良く喋っていて羨ましいなあ~とは思ったよ」
冬美「彼女そうだったのね。今何してるのかなとは思ってたけど」
ユウ「うん!だからそういうことで!そろそろアタシ夜勤だから仕事行くね!」
冬美「ええ。気をつけていきなさい」
ユウ「ありがと!じゃあね~」
プツン…
電話が切れた。ユウは楽しそうに人生送っているので特別な心配はいらないだろう。ユウ自身の性格が明るいからだ
冬美は思ったが私ももうちょっと明るくできればなとは思っていた。彼女の笑顔でバイトをしてるときに何度も前を向いたか
スマホをじっと見てたらアルエルが言った
アルエル「ユウさん?」
冬美「ええ。彼女は今アマリリスにいて総本山の祝福もしたんだって。前から夢だった祝福されて…ほんと幸せ者ね」
アルエル「あのひとは良い笑顔で私にも反応してくれたわ。大切な友達よ」
冬美「そうね…」
そう思うと冬美ますますこのアルエルという存在をより愛してあげようと思った。冬美はアルエルの肩を抱く
冬美「ねえ、私のアルエル?」
アルエル「なあに?私の人?」
そう言うと冬美はアルエルの唇にキスをした。幸せなキスであった
冬美「一生離さないからね。ずっと私の人でいてほしいの」
アルエル「私だって、冬美の生涯を一緒にいたいの。君といる人生…」
冬美「でも私、アルエルという大天使の血を受け継いだからどこまで生きるのかしら?」
大天使の血というのを思い出した。冬美が言うとアルエルは更に冬美の体にひっつく
アルエル「安心して。血を吸うと100年以上は生きるわ。そして死ぬ時も…私と一緒に死にましょう。約束よ」
冬美「嬉しいわアルエル」
アルエル「いつまでも一緒よ。冬美」
冬美「もちろんよ」
そう言うと2人がはひっつきながら夜を過ごしていた。貴女といればいい。君さえいればいい。2人はそう思っていた
ユキノウエの夜
2人の愛で暖かく過ごしていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます