第12話 若返るか

若返るか


「マーシャ様そのような魔法があるのならすでにわたくし利用しております」

「おぬし化粧はしておるよな」

「もちろん身だしなみですので」

「おぬしもヒール(快癒)魔法は知っておるのだろう」

「モチの論でございます」

「あの魔法は怪我でもすぐ直るようになる魔法だな?」

「はい」

「おぬし気が付かぬか?ヒール魔法1回ではそれほど気にならないが、2回3回と上書きするとさらに皮膚は若返ると」

「いいえそのようなことはあり得ません」

「そうか?まあよい、それに湯あみの後であれば化粧も落ちてちょうどよいか…」

「…」

「では厳密にはヒール魔法ではどこまで直せる?」

「軽いけがや打撲、そして軽い痛みです」

「2度かけても同じか?」

「同じです」

「そうか?2度目はより血流が良くなったりせぬか?」

「同じ場所に2度ですか?」

「ヒールは軽い回復だ、だがそれでは治らなかったケガに遭遇した時、上位魔法を知らなければ通常のヒールを重ね掛けすることになる」

「それはさらに直すことを意味する、まあ身体の欠損まではそれでも直すのは無理だが、重ね掛けでかなりひどい怪我でも直すことは可能だ」

「はいですがそれ以上は……え?」(ようやく侍従長は気が付く)

「そうじゃ肌は怪我が治ってしまえば重ね掛けしても表面上は変わらぬが、実は血行が良くなり肌は若返る、確かに年齢を戻すことは無理じゃが、数分から数時間ヒール魔法による部分的な若返りは可能なのじゃ、オーバーヒール状態は肌を若返らせる、通常はMPの無駄なのでやらないがな」


体を洗いきれいになったところで、体全体をタオルで拭き上げいつもの宮廷式子供服に着替える。

この後はいよいよ魔法の勉強だが、初級はすでに全て習得済みのため今は中級と、さらに先ほどのような実験魔法の授業が多くなっている。

魔法の力は侍従長よりも上回ってしまい特にMPは倍以上まで伸びている。

マーシャの能力値のデータがこれだ


マーシャ・オースティン・アルフレア  

5歳

種族 人

犯罪係数 ブルー 99(100)

女 

王家3女

天界の使徒(天使に準ずる)


魔法熟練度     88/100級

剣術        87/100級

小剣術       54/100級

槍術        66/100級

体術        55/100級


HP  1000/1000    ヒットポイント(体力)

MP  1800/2000    マジックポイント

SPD  87/100(+11)スピード(足の速さ)

AGI  67/100(+11)素早さ(敏捷度、魔法詠唱+補正)

AT   87/100(+11)アタック(攻撃力)

MAT  78/100(+11)マジックアタック(魔法攻撃力)

DF   91/100(+11)ディフェンス(防御力)

MDF  95/100(+11) マジックディフェンス(魔法防御力)

FA   44/100(+5+1) フィンガーアクション(器用さ)

IT  165/200(+2+1)インテリジェンス(脳力、頭の良さ)


魔法※火5水7土5風5聖7光5闇2無4

加護※(天使の雫+5・天界の代行者+5・不死鳥・神属性)

予備スキル※(家事全般、魔法、防御、身体能力向上、スキル捕食、スキル創造)

宮廷子供服・フリル付きスカート・下着・靴下・靴・コサージュ・リボン

※SPD+1・AGI+1・MAT+1・DF+1・MDF+1・IT+1

※カッコ内は加護と装飾品による+補正

※装飾品一つ一つを鑑定するには他のスキルが必要

現在の悩み 仕事の早期完遂 早く大人になること


これで5歳児とは恐れいる、能力や履歴を探るスキル持ちがほかにいたならば、かなりまずい数値だろう。

この王宮にはマーシャより上の能力持ちは騎士団長ぐらいしかいないのだから、検索スキルが無ければ何とかだましとおせるというもの。

王宮の与えられた部屋に戻ると机を挟んで侍従長と座り、わがままを言って手に入れさせた分厚い魔導書を開いている。

この魔導書は初級から中級までの魔法がほぼ全部載っている、いわゆる魔術師のバイブルであり魔法学校でも使われている教科書の一つ。

この世界には魔法があるため、魔法学校がある。

但し魔法学校と剣士の学校は分かれているわけではなく、王国アカデミーとして両方の勉強を教えているのだ。


そしてこのアカデミーは初等科(6歳~10歳)・中等科(10歳~15歳)・高等科(15歳~18歳~20歳)というように年齢で分かれている。

マーシャも6歳になればこのアカデミーに通うようになるが、その場合は寮に入ることになる。

王宮からアカデミーは直線距離で50kと離れており、町2つほどの距離を毎日通うことはできないからだ。

そしてその場合お付きのメイドも同じ寮に入るのだが、ほとんどの場合考えてみればわかるが。

主君が学校で勉強している時どうするのか?確かにこれではメイドはすることがなくなる。

それでどうしたかというと?

王族の場合、メイドや騎士の家族または親族に同年齢の子共がいるとその中から優先的にお付きの従者を仰せつかり学友になる。

家臣から見れば無料で勉強させてもらうことができ、しかもご学友になれるため、断るものはほぼいない。

但し中にはいけ好かない王族や貴族がいるので、嫌がる家臣の子を無理やりメイドとして付かせる親もいないことはない、ごく少数だが。

そして現在王の子らは2歳ほど違いで順次アカデミーへ入学している、残るはマーシャのみ。


単純に王子達には一人は必ずメイドが付くがもう一人は他の王子らに付くメイドと共有することになる。

そうしないと現在でも7人ぐらいのメイドが王子・姫付きメイドとして一緒に学問を学んでいるからだ。

学院にいる間はそういう理由から主君には必ず一人見習いメイド兼ご学友としてマーシャにも一人家臣の子から選ばなければならない。

王子には男のメイド、姫には女のメイドをそれぞれ選定する。

学院は年齢重視ではないため、2歳から3歳の差で入学してくるものもいる、当然だが学力が合わなければつらい思いをするのは今も昔も同じ。

だから1年間から2年ぐらい勉強してから入学してくるものもいる。

マーシャならば今すぐにでも入学できるのだがほかの王子たちの手前それは叶わない。

だがそれまでに、さらなる修行をして入学した暁には他の生徒が度肝を抜かすぐらいの姫様になっていることだろう。


「それではさっき話したヒール魔法を試してみよう、おぬしの顔を見るとやはり目が疲れておるな、それにここじゃ」


そういうと机に乗り出し侍従長の目の前まで近付くと、服の上からではわからない胸のふくらみを小さな手でつかんだ。


「マーシャ様…何を?」

「今からこの2か所、目元と胸にヒール魔法をかける、実験じゃ」

「わかりました」


うまくいけば侍従長を10歳ほど若返らせて騎士団長の気をさらにひきつけることができる。

マーシャのお・か・げ・で結婚しさらに子を作れば彼らはマーシャの下僕となり、将来尽くしてくれることは確実になる。

それに今の状況王様が次の子作りをしなければ弟や妹がいないので遊び相手にもことを欠く。

できれば2人に子をなしてもらいどんどん下僕を増やしたい。


「それでは目元から始めるよいな」

「はいマーシャ様」

「ヒール!」


侍従長の目の前に手をかざし癒術魔法を唱える、中級魔法まで使えるが一番低い初級魔法のヒールでできなければ意味がない。

マーシャはヒールを多少願いを多めに込めて侍従長の目にかけてみた、淡い光と共にゆっくりとその光が侍従長の目に集まり、そして消えていく。


「どうじゃ鏡を見てみろ」


そこには片目だけしわが伸び瞼がしっかり上がった顔が見て取れた。


「マーシャ様、これは?」

「成功じゃろう」

「お願いですこちらの目も、そうしないとおかしな顔に見えます」泣き…

「ん・それもそうじゃ」


そしてもう片方の目にも同じようにヒールをかける。

そこには5歳以上若返った36歳アラフォーの顔が鏡に映った。

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