第6話 だがそれは成功とは言えなかった。
だがそれは成功とは言えなかった。
「三ツ木晴乃香さん…」
「おう!」
「ええと、死因は追突、交通事故ですね」
「いやただの事故だったはずだ!」
天使は書類の次のページをめくる、すると前のページの続きが書かれていた。
「歩道を歩行中、上から人が落ちてきた」
「どこのだれかは知らんけど、とばっちりだが!」
それを聞いた途端天使は冷や汗をかきながら、バインダーで閉じられた書類の手前と今開いているページを何度となく見比べだした。
そこには飛び降り自殺で頭上から落ちてきた者の情報が。
9月15日
白井一郎
47歳
〇菱商事 係長 うつ病
死亡理由
自殺者によるとばっちりで死亡(修正済)
死亡場所〇×国道歩道上
ステータス 最悪
※要注意
数時間前にスキル実験による候補選別により2つのスキルを付与し、転生を完了済
尚、実験による経過観察のため寿命延長と各種スキルの増量を行いました。
同日同時刻
三つ木晴乃香
18歳
〇×高校3年生
死亡理由
自殺による飛び降りに巻き込まれ死亡
死亡場所〇×国道歩道上
ステータス 最良
「マジ!」
「ちょっとあんた、なんだよ!」
「申し訳ございません、少し手違いがございまして」
「手違いって・なにが?」
「いいえ大したことはございません」
天使は自分が起こした間違いの証拠隠滅を図ることにした。
どうせばれたところで大した問題はないのだが、先に転生した男性には数十のスキルを付与し転生させたため。
本来なら今目の前にいる魂につけるはずだったスキルが無くなってしまった。
本来この2つの魂は逆にならなければならず、先に転生した男の魂には例の捕食スキル2つが付与されている。
問題なのは先に転生した魂の死因だ。
魂は自ら死亡した場合、できるだけスキルをリセットすることになっている。
死因にもよるが、自殺者のスキルは自己崩壊している場合が多く、生きていくためのほとんどのスキルをすでになくしている場合が多い。
ではそこにスキルを足してやったならその魂は万々歳なのではと思われるが。
その考えは甘すぎる、自殺者の魂の一番厄介なのは、生の放棄・未来への失望そして都合の良い思考、現実逃避などというマイナスの思考や闇系のスキルを多く所持している可能性が高い。
先の転生者にはこの4つ以上のマイナス闇系スキルが少なからず含まれるからだ、この4つのうち2つ以上が残ったままで転生すると、近いうちに本人がまた自殺するかまたは他人を死に追いやるかの2択が発生しやすくなる。
実験の理由はスキルの減少であり直接的な人の減少を求めたものではない、所持するスキルを減らすことにより魂の重さを軽くして人ではなく他の動物へ転生しやすくするのが目的だ。
先ほどの自殺願望者には結果として他人を不幸に陥れる可能性が生まれてしまった。
すでに付与して現世に転生している場合、その転生者からスキルをはぎ取ることはできず。
現状なすすべはない。
だがやりようによってはまだできることがある。
それは他人のスキルを捕食できるスキル持ちを転生させればよい、先ほどの魂に付与したスキルと同じようだが、違いは内スキルと外スキル。
先ほどの転生者に付与したのは自分のスキルを捕食・同化するスキルで。
これからそのスキルをなくすためには新しく転生する魂に他人のスキルを捕食・同化するスキルを付与すればよい。
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