旧き世界の分岐記録:Re

ゆずねこ。

開幕

思い出せ。

蹂躙された友のことを。

思い出せ。

焼け爛れた家族のことを。

思い出せ。

竜に対する憎しみを。




幕は、今開かれた。




 ――かつて生態系の頂点に君臨していた人類は、しかし突如として現れた竜と呼ばれる存在に蹂躙されていた。竜と呼称されてはいるものの、本来それらが何なのかを知る存在は誰一人としていない。最初に発見された個体が神話に伝わる竜の特徴を持っていたが為に、その後に姿を見せる全ての怪物をひっくるめて竜と呼んでいた。

 人々は逃げ惑っている。誰だって命は惜しい。痛いのは嫌だ。戦う手段も持たないので、だから何もできずに逃げている。それを、憂いた者がいた。


「――私たちが世界を救うのよ」


 そう言って赤い瞳を細めて笑った女がいた。黄金の髪を揺らし、類まれなる美貌を持ち合わせたその女。名を、エステラ。彼女は各国から人を集め、ある者には技術を、ある者には戦力を捧げさせる。


「私たちが、人類を守るの。」


 その姿はまるで神の使いそのものであった。彼女はまるで最適解がわかっているように様々なことを成功させてきた。竜毒の血清の開発、竜に有効な攻撃手段の取得……。故に、今回の試みもまた、きっと成し遂げてくれるだろうと、誰もが彼女に期待をした。

 彼女は自信に満ちた笑みでそれに応えてみせる。私についてくれば絶対に全てが上手く行く、それが彼女の口癖だった。


「勿論、戦うのは私じゃない。きみたちにかかっている。……忘れないで、竜を殺すのはいつだって人間だ。きみたちは、あんな化け物どもに負けたりしない!」


 そして、彼女に選ばれた数名の男女。


「――さあ!快進撃を始めよう!私たちの地球を取り戻すんだ!」


 ――人は彼らを、竜狩りと呼んだ。

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