第31話 4人の新参メイド
「キミがエロオくん✕✕✕✕あたしここのメイド✕✕✕✕✕ヨロシクね」
……似てる…いや、似てるなんてもんじゃない……そっくりだ………
忘れもしない高一の時に初めて付き合った女の子と……
目尻の上がったクリッとした猫のような目。
少しだけプックリとした唇。
細いウエストと小さなお尻のスレンダーボディ。
だけど、オッパイは巨乳と言えるぐらい膨らんでる。
背丈も160センチほどでほとんど変わらない。
年の頃も僕たちが出逢ったの同じ16歳ぐらいに見える……
あの子とハッキリと違うのは、金髪ショートと赤い瞳。
あの子は……亜理紗は、黒髪のミディアムヘアで瞳も黒かった。
でも、それだけ。
他は何もかもが同じで瓜二つだ…………
「ちょっと聞いてるの? エロオくん、キミ大丈夫?」
心配そうな顔がニュッと間近に迫ってきて、ハッと我に返りました。
いけないいけない。ちょっと過去へトリップしちゃってましたね。
僕は初対面とは思えないメイドと目を合わせて大丈夫と返事をしました。
「フーン、キミさぁ、ほんとはあたしのお尻見て興奮してたんでしょ?」
「えっ、ち、違うよ、ホントにそんなんじゃないんだ……」
「ミニスカのメイド服にしたから、パンツ丸見えだったもんねぇ」
「たしかに見えてたけど、見てませんから!」
「アハハハハ、なーにぃそれ?」
こういう明るい性格も亜理紗とそっくりですよ。
ちょっと強引で奔放で男を振り回すところも。
「えーと、新しくきてくれたメイドさんですよね。もう知ってるみたいだけど、僕は行商人のエロオです。これから宜しくお願いします」
「あたしはジーナだよ。さっきも名前言ったけど、エロオくんパンツに興奮して聞こえてなかったみたいだからぁ」
「それはもう勘弁して。それより、ジーナはここに来る前は何をしてたの?」
話を逸らすために無理くり話題を振ったけど、ミニスカメイドは素直に乗ってくれました。基本、悪い子じゃなさそうです。
「パン屋で働いてたんだけど、売れ残りのかった~い黒パンばかり食べさせられるから辞めようと思ってたの。ほんと良いタイミングだったわ」
「あぁ、あの黒パンは僕もダメなんだ。硬すぎるよね。でも、ここの賄いは美味しい筈だから安心して。きっと喜んでもらえると思うよ」
「エロオくんも喜んでるでしょ? これからあたしにお世話してもらえて」
「そ、それは、今後のジーナの働き次第かなぁ……」
「フーン、キミって聞いてた話とずいぶん違うみたいね。絶倫の性獣って噂だったから、二人きりになった途端に犯されると思ってたよぉ」
「何それっ!? 一体誰がそんな無責任な噂を流─────」
「じゃあ、あたし行くね。夕食の手伝いしなきゃ。バイバイ」
人の話を聞いちゃいない。
そんなマイペースぶりもますますそっくりですよ。
あぁ、まさか異世界の片隅でトラウマ1号に遭遇するなんて夢にも思いませんでしたよ。これを機に克服しろってことかな。僕はスルーしたいだけなのに……
「当家の使用人として来て戴くことになったコニーとジーナです。午後から通いで炊事や洗濯、掃除をしてもらいますので、宜しくお願いしますね」
夕食の席で、新たな二人のメイドがセーラさんに紹介されました。
一人はあのジーナですけど、もう一人はアラフィフの中年女性で以前にもここで働いてたことがあるそうです。これなら即戦力として期待できるでしょう。
食後のことでした、食器を片付けているコニーがセーラさんと楽しそうに談笑しているのを見たのは。女領主との仲もかなり良好なようです。
さらにコニーは、コミュ障を拗らせている爆乳JKのキャシーとも話に花を咲かせています。なんと、乳母をやっていたんだとか。
いつも諦め顔でむっつりしてるキャシーが、笑顔で会話してるなんてちょっとした驚きです。コニーさん、マジで逸材でした。
ジーナはといえば、仕事そっちのけでベルちゃんとじゃれて遊んでます。
この二人は気が合いそうですし、そもそもベルちゃんはあういう性格ですから、老若男女を問わずこの村の誰からも好かれてますもんね。
そんな感じで、賑やかな晩餐となったのですが、一人だけ浮かない顔をした女性がいます。そう、マルゴさんです。
今日の午前に、自分の初恋の相手レジーと結婚したストラが、処女を捧げた僕を寝取り、その際に失神したストラの介抱までさせられるという屈辱を受けてます。
午後には、僕がレジーの右足麻痺と勃起不全を治療したことで、ストラはまたレジーとセックスできるようになりました。これも内心、複雑でしょうね……
という訳で、可及的速やかにマルゴさんをケアすることにしました。
食後のお茶が終わったところで、商品の片付けを手伝ってほしいからとセーラさんにお願いしてマルゴさんをお借りし、部屋に連れ込みます。
有無を言わず裸に剥いてベッドに寝かせると、指と舌で全身マッサージをしてあげました。僕の魂を込めた渾身のご奉仕にとても満足されたようです。
以前のように、優しい母性的な心からの笑みをまた見せてくれましたから。
「当家の使用人として来て戴くことになったアンナとエリカです。朝からお昼まで通いで炊事や洗濯、掃除をしてもらいますので、宜しくお願いしますね」
翌日の朝食の席で、新たな二人のメイドがセーラさんに紹介されました。
四十路のアンナと17歳のエリカは、なんと母娘だそうです。
それなら良いコンビとなって円滑に仕事を進めてくれるでしょう。
食事中にセーラさんが二人と話をしてるのを聞くと、アンナは戦争からこっち閉鎖されたままになっている小学校の教師をやっていたそうです。
その後は、果樹園にあるブランデーの蒸留所で働いていたそうな。
娘のエリカは、2年前までキャシーと同じモルザークの高等学校で寄宿生活をしてたのだけど、クルーレ村に帰ってきて薬草を育てているとか。
その経歴からも窺えるように、エリカの容姿はいかにも優等生然としてます。
オールバックにした黒髪ロングを後頭部でまとめて下してるのですが、ポニーテールみたいに素敵なうなじは見せてません。
化粧っ気がまるでない顔には、これまたお洒落とは言い難い横長の眼鏡が掛けられていて、表情も真一文字に口を結んでキリッとしてます
そんな感じですから、メイド服も当然ミニスカなんて着てない訳で。
マルゴさんと同じ膝下丈ですよ。白いニーハイソックスを穿いてるのに、絶対領域なんて隙は見せちゃくれません。
他に特筆しておくとしたら、このアンナとエリカの母娘、顔立ちが異世界人よりも日本人寄りです。黒髪黒目だけでなく、彫りが浅いし目も切れ長。
名前もなんとなく日本っぽいし、もしかしたら先祖が………
「エロオさん、少し宜しいですか」
朝食を終えたセーラさんは、キャシーと共に執務室に向かった。
邪魔はできないので朝の種付けは断念し、外出の準備をしようと階段を登っているところに優等生メイドのエリカから声をかけられる。
なんだろう、悪いことした記憶ないんだけど………?
彼女がまとう風紀委員長オーラのせいで、つい身構えてしまう僕でした。
「いいけど、僕に何か用かな?」
「セーラ様のことで言っておきたいことがあります」
それは聞き捨てなりませんね。
僕の女のことなら些細なことでも聞いておかないといけません。
「お聞きしましょう」
「あなたはキャサリン様の婚約者であることをくれぐれもお忘れなく。若い肉体で
セーラ様を篭絡しようなど不届き千万です。不埒な真似は慎んで下さい」
そうきましたかー。
これはまた……どんな立ち位置から物を言ってるんでしょうねえ。
一介の新参メイドが口を挟む問題じゃないと思うんだけど……
「君は何か勘違いしてるよ。僕にそんなつもりはないから」
「嘘よッ! セーラ様の持っている人脈を利用して、貴族と商売をしたいだけのくせにっ。色恋に疎いあのお方を手練手管で懐柔して、言うことを聞かせようだなんて鬼畜の所業だわ。私は絶対に許しません!」
「いや、だから、それは本当に誤解なんだってば。ちょっと僕の言う────」
「あんなに強くて凛々しかったセーラ様が、小娘のようにウキウキとあなたのことをお話になるなんて…………よくも……よくもやってくれましたわねッ!」
あぁ、何となく分かりましたよ。
この子の気持ちが。怒っている動機が。
要するにエリカは、女騎士セーラさんの大ファンというか信者なんだね。
そのアイドルを僕が汚して変えてしまったと怒ってるわけです。
しかし、困りました。信者には何を言っても無駄ですから。
下手なことを言えば、逆に火に油で怒りが増すだけでしょう。
ハァ~、どうしたらいいですかね、僕を睨みつける17歳のメイドを………
そんな頭痛が痛い状況に立ち尽くしていたら、救世主が現れました。
見た目はおっとりしたおばさんですが、メイド17には強いのです。
「何をしてるのエリカ、私達も朝食を済ませてお仕事に戻るわよ。早くなさい」
母親のアンナに注意された怒れる娘は、今はこの辺で勘弁してあげるわと言わんばかりの表情でフンッと鼻を鳴らして去って行きました。
ふぅ、やれやれですね。先が思いやられますよ。
「ごめんなさいね。あの子はずっと騎士のセーラ様に憧れてましたもので、今の状況に戸惑ってしまってるみたいですの」
「その気持ちは分からなくもないんですが、セーラさんも騎士の前に一人の女性ですから、女の幸せを求めてもバチは当らないでしょうに」
「その通りですわ。でも、処女の娘にはそれが分からないんですよ」
えーっ、娘が処女とか今日初めて会ったばかりの若い男に言うかな……
娘だけじゃなく、この母親も要チェックかもしれないですね。
「若さゆえの過ち、ですか」
ネタ振りされた気がしたので、定番のセリフを返しておきました。
そんな僕の心の中の小さな満足など知ったことではないアンナは、当然スルーしたうえに、またも僕の心をざわつかせる言葉を投げかけるのでした。
「あの子も17で良い年頃なんですが、まだまだ子供で困ってしまいますわ。そこでエロオさん………あの子のことを大人にしてあげてくれませんか?」
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