第18話 セーラママはガラス玉で堕ちました
「このカーライル家を破滅させるつもりですかっ!?」
さっきまで上機嫌だったセーラさんが烈火の如く激怒されてます。
サッパリ意味が分かりません。
希少品の砂糖を持ってきたというのに、感謝されるどころか罵倒されるなんて、メチャクチャ酷くないですか。せめて理由を教えてもらわないと。
「ちょっと何を仰られているのか分からないのですけど」
「砂糖の密輸取引なんて下手をすれば極刑ですわ!」
密輸って……それは大袈裟というものでしょう。
いくら希少品でもたかが砂糖ぐらいで………って、あぁそういうことかぁ。
「もしかして、この国では、砂糖は王家の専売なんですか?」
「当前ですわ!」
「では、ひょっとすると塩も……?」
「常識ですわ!」
アチャー、塩も希少品だと踏んで5キロほど持ってきたのに、骨折り損のくたびれ儲けとはこのことですよ。初商売でいきなりデッドストックとはいやはや。
この不良在庫どうしましょうかねえ。重たいから持って帰りたくないです。
「僕が不勉強でした。お詫びの印にこの塩も一緒に差し上げます」
「そ、そのようなこと………っ!?」
「商取引ではなく、贈答ならそこまで深刻に考える必要は無いのでは。今は復興期でこの町も孤立してますから、余所の役人に見つかることもないかと」
「……そうですわね。当家だけで消費するのであれば問題ないでしょう」
セーラさんはそれだけ言うと、マルゴに砂糖と塩を片付けさせました。
望外のプレゼントで機嫌が直った女領主は営業スマイルを取り戻し、次の商品をお見せ下さらないかしらと熱い視線で催促してきます。
「では、まずは前回お喜び頂いたガラス玉の色柄ものをご覧下さい」
透き通ったクリアな赤、青、黄、緑、紫、水色のビー玉。
透明なガラスの中に多様で色とりどりの模様が入ったビー玉。
それらを計200個ほど、用意したケースの中に入れて差し出しました。
「ハァ~……どれもこれも素敵ですわぁ………!」
「うわぁぁぁ、すっごいキレイだねミュウちゃん!」
「本当に綺麗ねえ。まるで王妃様の宝箱みたい」
「……価値のあるガラス細工がこんなに………!」
ソファーに座らずにセーラさんの後ろに控えて立っているメイドのマルゴさんも、あまりの光景に目を見張って驚いてますよ。
でも、まだですよ。ここからさらに度肝を抜いてあげますからね。
「こちらは、同じガラス玉でも、希少な大粒になります」
直径3センチの模様入りビー玉です。
ちょっぴりお値段高目だったので30個だけ仕入れてきました。
ビニール袋を破って先程のケースの中にドドドと流し込みます。
「んまぁ……とっても大きいですわぁ………!」
「でっかい! でっかいよこれミュウちゃん!」
「それに模様もたくさんあって宝石よりステキだわ」
「……一体いくらになるのこれ………!?」
「あぁ、なんという目の保養なのでしょう……」
うふふふふ、また驚いてます、もっと驚いてますよ。
何だかニヤニヤしちゃいますね。こうも喜んでもらえると。
だけどまだです。ここからが本番ですからね。
ちゃんと付いてきて下さいよ。それじゃあ行きま~す。
「こちらが、今回の目玉商品となる、トンボ球でございます」
直径4ミリ、6ミリ、8ミリのガラス玉。
ビー玉と違って形や模様がとにかくアクセサリーのようにお洒落。
そして、その真ん中には穴が貫通しています。
3サイズ合計で数百個のセットを4種類仕入れてきたので、すべて合わせると2千個ぐらいあるとはずです。こちらは専用ケースのまま差し出しました。
さらに、12ミリの夜行性タイプ8個と、18ミリの大粒で彩色が凝っているアクセサリーの中心タイプ6個を丁寧に並べてみせました。
セーラさんもキャシーもマルゴさんもミュウちゃんもハッと息を呑みます。
ベルちゃんだけは、ピンときてなくてポカンとしてるけど。
緊迫した沈黙が数秒続いた後、女領主が絞り出すような声を出しました。
「こ…これは……ガラスビーズ………ですか……っ!?」
「ご名答。さすが領主様ですね。博識であられます」
「しかし、これほど形が整っていて美しい細工が施されたものは、見たことも聞いたこともありませんわ!」
「そうでなくては商売で勝てませんから。さて、商人としての腕を確かめる貴方のテストに、これで私は合格ということで宜しいでしょうか?」
「まぁ、テストだなんて……私、そんなさもしいことは考えておりませんでしたわ。エロオさんには、是非この町で商人として成功して戴きたいの。私も娘も、そのための尽力は惜しみませんことよ」
「有難いお言葉、痛み入ります。お礼と言っては何ですが、セーラ様には、私の好意の印としてプレゼントを用意させて頂きました。どうかご笑納下さい」
僕がうやうやしく献上したのは、トンボ球のネックレスとブレスレットです。
二つ足しても5千円でお釣りがくる代物ですけど、この世界の人には家宝どころか、もしかすると国宝にすら見えるかもしれませんね。
「んっまぁ! これを私に………贈呈して下さると言うのですか……っ!?」
「僕の気持ちですから、快く受け取って頂けると嬉しい限りです」
「………当家の家宝として大切にさせて戴きますわ」
セーラさんは感極まって涙目になってますよ。
そして、その潤んだ目が僕を熱く見つめています。
これは完全に落ちてますね。ガラス玉で僕の虜にしちゃいましたよ。
晴れて想いが通じ合ったのだから、鉄は熱いうちに打ちましょう。
「セーラさん、今後の取引について二人きりで相談したのいですが……」
「……宜しいですわ。でしたら、二階の私の部屋へ参りましょう」
やった、GOサイン出ました!
これでまた美魔女とゴム無しエッチできる。中出しできる。
と、その前に、まだビー玉やトンボ球を見てキャッキャウフフしてるベルちゃんたちに、幸せのおすそ分けをしておきますか。
「ベルちゃんたちには、この中からどれでも好きな物を三つあげるよ」
「えっ、ホントにもらっていいのエロオ!?」
「もちろんだよ。遠慮しないで好きなのを選んでね」
「じゃあこれ、このでっかいの!」
「みんなもどうぞ、時間はあるからゆっくり選んでいいからね」
「私も本当に貰って良いんですか?」
「ミュウちゃんにはいろいろ助けてもらってるんだから当然だよ」
「……こんな価値の高いもの……私には似合わないから…」
「僕と結婚するんだから、花嫁修業だと思ってじっくり選ぶんだよ」
「エロオ様、これほどの品となると、さすがに私は頂戴できません」
「ダメですよ。セーラさんに命令される前に自分で選んで下さい」
マルゴさんは、当主が真剣な顔で頷くのを見てやっと決心し、ガラス玉を吟味している少女たちの中に加わっていった。
よし、これで心置きなくエッチに集中できますね。
僕は、女領主の手を引いて歩き出し、急いで二階へと向かいます。
繋いでる手にギュッと力を込めると、セーラさんも握り返してくれました。
言葉も視線も交わしてないのに、思いが伝わり合う。
────あぁ、こんなに甘酸っぱい体験は何年ぶりだろうか……
そんな魅力的な相手とこれから精魂尽きるまで肉体交渉します!
そう思っただけで、愚息が痛いほど膨張し粘り気のある涙を流すのでした。
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