第12話 母と娘、二人とも孕ませてほしいそうです

「僕の子種でセーラさんが孕んでもかまわないのですか?」


 キャシーとの夜の営みを保つためとはいえ、義母で領主のセーラさんが僕の子供を産むことになったら、いろいろ複雑な問題になりますよね。


「セーラ様がご懐妊ですか!? それはまずないかと存じます……」


「何故でしょう」


「…その……お年が…お年ですし……」


 年齢の問題ですか。

 実際のところセーラさんていくつなんでしょうね。

 第一印象はアラサーでしたが、18の娘がいるのでアラフォー、いや、それ以上かも。まさに美魔女。うーん、気になります。これも素直に聞いてみましょう。


「ココだけの話、セーラさんは、おいくつなのですか?」


「………34歳でございます…」


「34!? え、でも、キャシーが18だから……16で産んだってことに…」


「勘違いされておられます。キャサリン様は、15歳ですよ」


「キャシーは高等学校の3年生と聞きましたけど」


「その通りですので、15歳になります」


 んんん……高3なのに15って、何か常識に食い違いがありますね。

 マルゴさんに問いかけたところ、この異世界にはまだ中学校が無いとのことでした。初等学校に6年通った後に、6年制の高等学校へ進むそうです。

 という訳で、キャシーは正真正銘ピッチピチの15歳でした。

 あの爆乳がまだ発展途上とは将来が楽しみすぎです。大事に育てましょう。


「ところで、セーラさんの34歳という年齢で妊娠するのは難しいのですか?」

 

「はい、10代後半から20代前半が出産の適齢期です。30を超えて出産するのは非常に稀なことになります」


 へぇ、30代での初婚が珍しくなくなった現代日本とは文化が違いますね。

 まぁ異世界だから当たり前ですけど。 

 とにかく、妊娠の危険はほとんどないから、セーラさんに中出ししまくっても大丈夫ということですか。でも、一応は確認しておくべきでしょう。


「もしもの話ですが、セーラさんが妊娠した場合はどうなりますか?」


「それはもう、盛大なお祝いになります!」


「えぇぇぇぇぇ、いやでも、後継者問題とかに発展しますよね?」


「当家は、広大な領地や豊かな財源を持った貴族とは違いますから」


「そういうものですか」


「はい、それにご存じかと思いますが、妊婦は赤子によって魔力が二人分になります。慢性的な魔力不足に悩むセーラ様には二重の喜びでございます」


 まったくご存じではなかったですが、これも凄い事実ですね。

 懐妊したら魔力2倍なんて、そのために妊娠と出産を繰り返し、産んだ子供は売り飛ばすという社会の闇がありそうで怖いですよ。

 ただ、まっとうな女性にとっては神の恩寵なのは間違いないでしょう。


「分かりました。キャシーはもちろんのこと、セーラさんも孕ませる方向で努力させて頂きます」


「あぁ、本当にありがとうございます! 当主に代わってお礼申し上げます」


 感極まったマルゴさんは、無意識に僕の手を両手で握りしめて額に当ててからキスをしました。正直、照れますね。

 マルゴさんも我に返ってから赤面し、それではごゆっくりお休みなさいませとお辞儀して、逃げるように部屋から去って行きました。




「少し村を見させてもらってから、仕入れのために拠点に帰るつもりです」


 翌朝、セーラさんに朝食の席で予定を訊かれて答えたのだけど、軽い失言をしてしまったようです。


「このは、エロオ様の第二の故郷となりますので、ご存分に見学なさると宜しいですわ」


 町という部分をあからさまに強調されて言われました。

 キャシーの話では、人口減少により町から村へ降格されたそうなのに、領主であるセーラさんの中では今も町のままのようです。


「私がご案内できれば良いのですが、務めが忙しく叶いません────」


「ボクが案内するよ!」


「ベル、貴方では自分が行きたい所に行って遊ぶだけですわ。キャシー、貴方が責任を持ってエロオさんをご案内しなさい」


「……はい」


 キャシーは伏し目がちに返事をして僕を見ようともしない。

 昨晩、エッチの最中に逃げていきましたからね。無理もありません。

 このイベント『村のお散歩デート』で関係を修復したいところです。


「えー、ボクもいっしょに行っていいでしょ?」


「いけません。貴方は算数の課題を終わらせるまで外出禁止です」


 算数という言葉に絶望したベルちゃんは、テーブルに額を突っ伏してボソボソと呪いの言葉を吐いてます。ちょっと不憫ですね。

 ベルちゃんには、僕もやって欲しいことがあるので助け舟を出しましょう。


「アナベルも同行させてもらえませんか。勉強なら仕入れから戻ってから僕が教えますので、是非お願いします」


「エロオさんがそこまで仰るのなら構いませんわ」


「やった!ありがとうエロオ、じゃない、エロオッサン!」


 エロオッサンはマジ勘弁と思いましたが、よく考えると、あながち間違った評価じゃない人間になってきてるのでスルーしました。

 ここのところ急にエロくなりましたし、小学生から見れば23歳の僕はオッサンでしょうしね。




「ベルちゃん、キャシーさん、いらっしゃい。あら、あの時のお兄さんじゃないですか! 良かった、またこの世界に来れたんですね」


 朝食後に屋敷を出て最初に向かったのは、召喚された空き家の先にあるミュウちゃんの家だった。近くに川が流れいて水車小屋が見える。

 家の中に入ると、空き家にいた年長者らしき少年と両親がテーブルに居た。


「あ、お前は役立たずの町人Aじゃないか。また来ちまったのかよ」


「エロオだよ!それに本当は役立たずなんかじゃなかったんだ」


「このバカ息子がっ、ちょっと黙ってろ。さあ、お嬢さんがた、こっちへ来て座ってください」


 父親の言葉に甘えてテーブルにつくと、僕から順に自己紹介を始めました。

 ミュウちゃんの兄はザックと言って13歳、驚くことにこの異世界では大人扱いのようです。何でも大陸法では12歳が成人年齢なんだとか。

 ちなみに、ミュウちゃんはベルちゃんと同い年で10歳だそうです。


 父親のジャンは隣の水車小屋で粉を引く仕事をしているのですが、この領地では土壌のせいか小麦がうまく育たず、近隣の市や村への道が危険なために小麦などの穀物もあまり入ってこないので厳しいという情報を得ました。

 その後も、他愛のない世間話を装いつついろんな話を聞いていきます。

 そしてお互い打ち解けてきた頃、僕は一番聞きたいことを口にしました。

 

「この村に一番必要なものは何でしょうか?」


「そんなの決まっていますよ」


 これまで僕たちの話を黙って見守っていた母親のリリアンが、こればっかりは言わせてもらうという感じで口を開きました。

 しかし、一体何なのでしょうね。

 控えめでおっとりした女性のリリアンが、ここまで主張したいものって。


「是非、聞かせて下さい。それは何ですか?」

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