お金を振り込んだ理由は?

善野 オン

第2話 Bからの電話

次の日、またおばあさんの家に電話がありました。


〈ルルルルル・・・ルルルルル・・・〉

「もしもし」

「あっ、おばあちゃん。オレだけど・・・」

「甥(おい)のBちゃんね。どうしたの?」

「あのさ、オレ昨日、電車の中に大事な書類の入ったカバンを忘れちゃって・・・」

「あら、それは大変ね」

「それで、明日の夜までに百万円用意しないと、会社クビになっちゃうんだ」

「とりあえず、百万円でいいんだけど、何とかならないかな?」

「百万円なら何とかなるけど・・・」

「じゃあ、お願い。〇△×銀行の口座に振り込んで欲しいんだけど。助かるよ。よかった」

「・・・ところで、さっきから声が変なんだけど、風邪でも引いたのかい?」

「ゴホン、ゴホン・・・、そうなんだよ、昨日から喉(のど)の調子が良くなくって、ごめんね」

「・・・」


おばあさんは、ここで気が付き、思い切って聞いてみました。

「あなた、甥(おい)のBじゃないでしょ。私をだましてお金を取ろうとウソをついているんでしょ、そんなことをしちゃダメよ!」

男はしばらく黙っていたが

「はい、私はウソつきです。百万円必要だというのは本当です。だから、お金を振り込んでください」」

と言って電話を切った。

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