『三歳の息子が田原総一朗かも知れない件。』という物語を書いたら田原総一朗さん御本人とお話をする僥倖に恵まれた件。

もと

それについて一ヶ月半ほど悶えた私の結論。

私は無敵だ。

 手が空いた時にポチポチ書いてポチッと保存。きっと皆様同じ事をやってると思う。


 ポチポチ、ポチポチ、なんかベルのマークに赤いの付いてる。ハートとかレビューとか、奇特な方がたまに付けてくれる赤い印。


 ポチッ……『三歳の息子が田原総一朗かも知れない件。』だけ異常な事になってる。

 なんだなんだ、何かやらかした?

 もしかしたら田原さんのファンの方々の地雷を踏み抜いて炎上したのかしら? と思ってる間にもワークスペースを開く度にPVがワサワサ増えていく。


 怖いんですけど?


 あ、受賞!

 田原総一朗賞、受賞!

 私だ!


 ここで座ったまま10センチ飛んだ。どこの何という筋肉が動いたのかは知らない。

 受賞しましたよとメールも来てた。マジだ。


 そこから色んな方々が星を付けてくれたり、一言頂戴したり、ビックリするぐらいヒッソリやってるのに大波小波に巻き込まれた。

 目を通してくれただけでも嬉しいのに、痕跡まで残してくれて、更に声をかけて下さった全ての皆々様、ありがとうございました。お返事に頭を悩ます時間があるなら物語を書きたいと、失礼を承知でかたくなに絵文字を返してます。


 でも超ニヤニヤしてるし、なんなら今もニヤニヤしちゃってる。振り返ってみよう。


 『純文学、文学』、これがまさか?

 意識した事もないし、そもそも純文学って何だっけなんて検索しようと思ったけど気恥ずかしくて止めておいた。『純文楽』ってお返事をしてた。なんかそっちの方が恥ずかしいわ、でもその時の心境はそうだったんだろうな。私に学は無い、書くのが楽しいだけ。


 『筒井康隆、星新一のよう』、これがまさか?

 大好きで小さい頃から山ほど読んでた。阿刀田高も小松左京も大好き。いやでもそれはナイって、見なかった事にしよう。

 私は褒められ慣れてない。本当は千切れそうなぐらいシッポをブンブン振ってるけど、隠してプルプルしとく。


 『面白いか分からない』、そうそうそれそれ。

 なんか一番率直な感想だと思う。

 私も分からなかった。どうして田原さんを三歳にしたのか、何がどうなってる物語なのか未だに分からない。


 それでも読んでもらえて、選んでもらえた。

 全く分からない、分からないけど嬉しくて笑ってる。

 賞なんて縁が無かった。だってまず出して無いし、二十年近くのブランクをズリズリ引っ提げて書き始めたのは去年の秋ぐらいから。

 無理矢理に記憶をひねり出しても小学校の作文以来だわ、しかも小さなクラスの中で先生の独断でもらえたガンバッタデ賞だ。あれ以来かも。嬉しい。

 とりあえずTwitterでアカウントを作って田原さんの元へお礼に走る。

 とりあえず関係ある事柄をリツイートしまくる。

 とりあえずニヤニヤしてる。こんな事って本当にあるんだ。


 そういえば私、受賞前に何か書いてた。

 それがコチラ。

『そう、あのお題楽しい。

 田原総一朗さんを二次創作なんて笑いながら書いた。面白い、生きてる人間を二次創作、下手な事は出来ない緊張感、どう辿り着くのか自分も分からないまま突っ走って書き抜けた。

 どういうお題よ』

 これを書いてた私に教えてあげたいよ、良かったねオメデトウ。

 でもその文章の勢い怖いね、下手なラッパーみたいだね。


 そして時は流れ、やってきた。


 はあ、賞金だ。

 田原さんが88歳の米寿という事で、8万8千円分のAmazonギフト券。


 ずっと欲しかった物、ある。

 化石みたいな言語センスを大切にしつつ、今の物語の為に辞書が欲しい。手元にあるのは小学生用の辞書、それじゃ足りないんだわ。カタカナも漢字もコトワザも古語も全部読みたい。

 図鑑もずっと欲しいと思ってた。実家には今も色んな分野のカラーの分厚いヤツがズラッと並んでる。私はあんなに楽しくそれを眺めて過ごしてたのに、我が子にその体験をさせてない。


 どちらも紙が良い。

 検索すればいいじゃんって皆様は言うでしょ、せっかくの賞金を勿体ない使い方すんなって。

 違うんだって。

 例えば『牛』を検索すればダーッと牛の情報は出てくる、でも他の有蹄類も知らず知らず目に入っちゃって見えちゃう紙が良いの。

 牛を知りたかったのにオカピの解説読んでるとか、そういうのが楽しいんだと思う。いや別にオカピじゃなくマメジカとかでも良いんだけど、とにかく知る事って楽しいんだと伝えたい。

 何かをピンポイントで調べるのも大事だけど、偶然ついでに知っちゃう事も面白い。だから図鑑や辞書が欲しい。


 ……意外と余る。

 一応、子供達に欲しい物があるか聞いてみる。


フィギュアカノジョ

アクスタアクリルスタンド

「ジャンプ」


 なるほど、とりあえずジャンプはコンビニで良かろうよ。他は応相談だわ。

 だってこんな事、多分もう一生無いと思う。

 フィギュアなら最推しのつよつよなヤツを、アクスタも持ち歩くか飾るか保存するかで絵柄も大きさも何もかも厳選しなきゃでしょ。大切に考えよう。


 そして時は流れ、不意にやってきた。


 田原さんのAI音声で、私が書いた物を朗読してくれた。田原さんのご紹介でこういう話になったらしい。

 なにこの素敵な御褒美の奇襲、もうとっくにシッポは千切れてるしプルプルどころかガクガクしちゃうわ。


 もうイソイソと聞きに行くと……本当に田原さんの声で読んでくれてる、面白い、なんだこれは、今こんな事になってるの、なにこれ超未来じゃん。

 これ凄い。この田原さんの声なら昔話とか似合いそうと思ってみたりして。

 「昔々、いや昔と言ってもね、それはどこまでの昔かというとね……」、みたいにも作れるのか、凄くない? 


 AI音声か。創作に使うなら文字での表現は見当も付かないぐらい難しいけど、きっと面白いネタになる。

 世界を救ったり、悪用されたり、怪我をした子猫を助けたりも出来そう、絶滅の運命から恐竜を逃がせるかも知れない。


 凄い技術だ、皆様こういうの知ってんの?

 今は普通? 私が浦島太郎なの?

 なんか分かんないけど凄い! 凄いの教えて貰った!


 そして時は流れ、遂にやってきた。


 田原さんとの面談。


 めんだん。

 東京には行けないので辞退しようかと思ったらカクヨムの中の方は優しかった、電話でお話させてくれると。


 めんだん。

 え、何を……お礼と、何を……?

 政治経済の話は分からなくも無いけど、私は庶民だ。

 今現在の戦争の話も知らなくは無いけど、私は一般人だ。

 その辺りは水平線の向こうぐらいの話題だし、田原さんのフィールドに飛び込めば私はただの無知、迷惑千万だろう。


 あ、かかって来ちゃった。


「あ、あ、あ」

「初めまして、田原総一朗です」


 本物だ、ナマだ、すっげー。


 実は最近のお姿はほとんど知らないまま書いてた。十年以上昔の田原さんのイメージしか無いまま、Wikiを少し読んで書いた。

 だからビックリした。田原さんは優しいんだ。

 テレビの中でピリッとしてる感じにビビってたのに、物凄く構えてたのに、なんかもう全然違う。


 ……これ、ギャップ萌えじゃん?

 今の人達にも通じる言葉なのか分からないけどギャップ萌えの真骨頂みたいな御仁じゃない? 普段の感じ、こういう感じ、知ってしまったよ?

 アツい。


 とか思ってる間にもお話は進む、いつの間にか田原さんの子供時代の事を聞いてる。

 重い。

 当たり前か、88歳なんだ。


 そしていつの間にか違うお話に、また違うお話に……そうこれだ、田原さんは飛ぶし跳ぶし翔ぶんだ。

 このイメージで書いたのかな、きっとこれだわ。


 あ、終わっちゃった。


 わあ、凄かった。スマホ熱っつい。

 田原総一朗さんと喋っちゃった。

 これで多分この受賞に関するアレコレは終わりだと思う。凄い経験をした。

 一生分の運を使い果たした気もする。選ばれて、賞金を頂戴して、書いた物を朗読して貰って、テレビに出てる方とお喋りまでしちゃった。

 選ばれてビビったプルプルも、緊張のガクガクも一生分だった。


 という事は、私はもう一生ビビらないし緊張しない。

 よし、軽く無敵じゃん。頑張って生きるわ。



  おわり。

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『三歳の息子が田原総一朗かも知れない件。』という物語を書いたら田原総一朗さん御本人とお話をする僥倖に恵まれた件。 もと @motoguru_maya

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