第16話

○ドラゴンについて


 その夜、魔法国になぜドラゴンがいるのか、その理由をアンソニーさまが話してくれた。


 昔、アンソニーさまの曽祖父が、中国を旅した際、タクラマカン砂漠で、小さな白い蛇を拾って、魔法国に連れ帰り大事に育てていた。


小さな白い蛇だとばかり思っていたが、だんだん変態して、どんどん大きくなり、その形状から、実は、ドラゴンだったことが判明する。

小さな白い蛇は、ドラゴンの幼生だったのだ。


 家族同様、我が子のように育てていたため、ドラゴンとわかっても何も変わることなく、愛情を注いでいた。

はずなのに、生まれつき性格がひん曲がっていたこともあり、生みの親に会いたい問題とか、あれこれ不満が重なり、荒くれやさぐれた男の子ドラゴンに勝手に成長してしまった。


 魔法学園に入学したものの、悪さし放題、気に入らないことがあるたびに暴れて、制御不能状態になり退学処分になる。

そのうち、ふらっと家出して、世界を放浪しているらしいという噂が流れていた。

が、ある日、突然、インドの山奥から、これもまたヤンチャでわがままなの女の子ドラゴンを連れて魔法国に帰ってくる。

不良ドラゴン同士夫婦となり、魔法国の山間部に住み着き、繁殖力が強いため、子どもがどんどん生まれ、大家族になっていた。

ドラゴン家族はみな暴れん坊で、いつも意味不明に因縁をつけて威嚇したり暴れたり、話を聞こうともしない、聞く耳なし状態。

魔法学校にも入らず、気ままに暮らし、このまま成長すると制御不能になるかもしれない、どうにかして今のうちに抑えないと大変なことになる、手に追えなくなるんじゃないかと心配するものがいて、城での会議の話題に上がっていた。

しかし、城の長老たちはドラゴンを自分の目でしかと見たことがなく、その大きさも破壊力がわからず、性善説的に、育った国を破壊することはないだろうという安易な考えで傍観している最中だった。

甘いのかそれが妥当なのか、まだわからない。


 小さく可愛かった男の子ドラゴンの名前は、キッド。

奥さんは、ジョリーとか。

子どもドラゴンは、たくさんいるから、普通の人には、どれがどの子が見分けがつかないという。


あ、あ、めんどややこしい。


魔法国には、何か問題があると聞いている、その上、ドラゴン問題とか。

しかも、書斎会議で話し合っていたのは、別の案件のようだ。

そこはまだ詳しくは聞いていないけど、どーなってるの?


 「この本を読むといいですよ」

と、アンソニーが、魔法国の歴史の本を選んてくれた。

魔法のレクチャーは、朝の日課にしましょうと約束をした。

明日は、結婚式だから。その翌日、明後日から始めることになる。

わあ、一緒に魔法の勉強ができる、嬉しい。

アンソニーマイラブ!


それに、それに、短剣をプレゼントされた。

全体シルバーで、ピンクの石が埋め込まれた短剣だ。


これで、自分の身を守り、周りも助けることができる。魔法国の貴族の女性にも、魔法使いにも必要なアイテムとか。


いよいよ明日は結婚式。


あ、あ、トッツィ。

トッツィは相変わらず何も言わない。

その無言がたまらなく嫌だった。

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