死者転生なんて
@konohahlovlj
第1話 プロローグ
気がつくと、私はとっても綺麗な顔をした女神の前に立っていた。彼女は全身が金色でコーティングされていて、あまりの神々しさにとてもじゃないが直視出来ない。私がたじろいでいると、彼女の方から話しかけてきた。
「ようこそ、こちらは生まれ変わりセンターです。まずは、人生お疲れ様でした。あなたの前世の行いから、これからの生まれ変わり先を決定します。どうぞこちらにおいでください。」
分厚いファイルに目を落としてページを捲る彼女に、私は恐る恐る近づいていった。足音を極限まで忍ばせていたからか、彼女は私の接近に全く気付かない様子だ。私が彼女の半径1M以内に入ったところで彼女が独り言のようにこう呟いた。
「あ〜、今回もダメだったみたいね」
彼女の言いたいことは分かる。多分、いい転生先がないのだろう。
私の人生は、人に自慢できるようなものではなかった。どちらかというと恥ずかしさばかりが残る人生だったと思う。
私は病室の一室で1人寂しく息を引きとった。医者や看護師にも気付かれることなくこの世を去った。入院している間、私を訪れた者はいなかった。
それを強調するかのように、私の隣のベッドには足を骨折した70くらいのおばあちゃんが寝ていて、よく親族達がお見舞いに訪れていた。私が死ぬ直前も隣が賑やかだったのを覚えている。1番耳に残るのは子供の声だ。子供は孤独じゃないことの証明だと私は思う。私なんかに子供がいるはずなく、ただただ隣の人が羨ましかっただけかもしれない。
私が孤独になった原因は、私の嫌な性格にあると思う。私は生まれつき顔がブスだった。物心付いた頃に、鏡を見て涙を浮かべたのを今でも鮮明に覚えている。あの衝撃は何にも例えるのが正解だろうか、これから始まる地獄を告げられているみたいだった。
とはいっても、小学校までは何不自由なく学校生活を送ることができた。可愛い友達とも仲良くなれたし、男友達にも恵まれた。運動音痴だった私を、彼らは気を遣って室内の遊びによく誘ってくれたものだ。
問題は中学校だ。私は見た目のせいで軽くイジメを受けるようになった。小学校の友達とは、クラスやそもそもの学校自体が違うこともあり、一年生のクラスに親しい人が1人もいない状態からスタートすることになった。
よく、陰口のようなものを叩かれていたと思う。男子から隠れて、嫌な女どもに直接顔を悪く言われたこともあった。私は最初こそ「貴方もブスだよね!」と強く出ていたのだが、いかんせん私はクラス1のブスだったため、それを自覚するようになると悪口に対して何も言い返せなくなった。私が段々と暗い表情で俯くようになっていった。
私は唐突に親にまでブス呼ばわりされ出した。「お前はブスなんだから、彼氏なんて出来ることはないだろうな」とか「ブスだと人生楽しくないよ」とか。私はショックで泣いて反発した。「お前らだってブスだろ!私の親なんだから。」そう言うと、毎回彼らは私を更なる侮辱を施す。「うるさいうるさい。ブスはお前だ。」「そうよ。それに私たちはもう結婚しているからいいの。明梨はこれからでしょ?これから自分だけ男が寄ってこない寂しい人生を送るのよ。」
私の性格はだんだん捻じ曲げられていった。明るく優しく真面目な明梨ちゃんは、暗く意地悪で不真面目な明梨ちゃんヘと変貌していった。完全に変わったのは、とある事件がきっかけだった。私は顔が平均くらいの女の子の友達と授業と授業の間の休み時間に遊んでいた。遊んでいたといっても他愛のない会話をしていただけだった。ヤンチャな男子たちが先生の目を見計らって水鉄砲を自身の鞄から取り出した。教室中に散らばってお互いを打ち合ってあそ遊びだす。私と友達はイラッときて、彼らに文句を言ってやった。すると彼らは集中して私に向かって水を発射させ始めた。私が「なんでよ!」と声を荒げると、男子たちはニヤニヤしながら「だってお前ブスじゃん。俺らで洗ってあげねぇと。」と言い返してきた。私は隣にいた友達を見た。彼女は全く濡れていない、人を蔑むような目でこちらを見ていた。その時、私は悟った。ブスは人から嫌われる人生を送るんだと。私の人生は私を痛めつけるんだと。
それから、私は周りの人にとって最低な人間になっていった。
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