【完結】婚約破棄される未来を変える為に海に飛び込んでみようと思います〜大逆転は一週間で!?溺愛はすぐ側に〜

やきいもほくほく

第1話 卒業パーティーまで七日


「パトリック殿下は、何故あの令嬢に夢中なのかしらッ!それにあの態度、本当に許せないわッ」


「お嬢様ッ……!落ち着いて下さいませ」


「わたくしに触らないでッ!!」


「……マデリーンお嬢様」


「どうして……わたくしは何を間違えたというの!?」



"マデリーン・ウォルリナ"

三大公爵の一つ……別名"水の公爵"と呼ばれるウォルリナ公爵家に生まれ、二種の魔法属性を持つマデリーンは、『水の乙女』と『氷の乙女』の称号を持っていた。


ガイナ王国の貴族達は皆、脈々と受け継がれる血筋によって魔法を使う事が出来る。

強い弱いはあれど、それは絶対的なものだった。

種類は様々で、家々により代表的な魔法が存在する。


そして、この国の第一王子である"パトリック・ドレ・ガイナ"の婚約者だった。

橙色の髪と金色の瞳はこの国の王族の証……炎の魔法を使い、代々国をまとめ上げてきた。


幼い頃の約束を果たす為、パトリックを支えると誓ったマデリーンは血の滲むような努力をして自分を高めてきた。


(今は違ったとしても、パトリック殿下は正しい道に気付いてくれる……)


そう思って日々、自分が出来る精一杯の事を頑張ってきた。

パトリックとの仲以外は全て順調だった。

しかし、そんな日々に終わりが訪れる。


"ローズマリー・シーア“

シーア侯爵が孤児院から迎え入れた養女である彼女は、花を生み出せる特殊な魔法を使った。

平民が魔力を持って生まれてくる事は、本当に珍しい事で奇跡に近いとされていた。

そんなローズマリーは"花の乙女"の称号を獲得する予定だと聞いた。


"~の乙女"はその属性で一番強い力を持っている女性に与えられる称号だった。

これを承ると結婚に有利になる為、貴族の令嬢達は幼い頃から魔力を高めるために懸命に努力している。

それはマデリーンも同じだった。


そしてその中でも特別視されるのは、その人だけしか使えない特殊な魔法を使う存在である。


それはパトリックの弟である、この国の第二王子である"ドウェイン・ドレ・ガイナ"がいい例だろう。

彼は、この国でも発現したことのない毒魔法の使い手だった。

王族にも関わらずに髪の色は黒、瞳の色は紫色だった。

王族の魔法属性と色を継げなかった事で、随分と肩身の狭い思いをしていたそうだ。


けれどその事に挫ける事なく、懸命に努力しているドウェインは逆境を跳ね除けて民の役に立つ為に動いていた。

そんな彼を、心から尊敬していた。


しかしパトリックはそんなドウェインのことを嫌っていた。

何故努力家な彼を嘲笑うのか理解できなかったが、どうやらドウェインの王族らしからぬ見た目を馬鹿にしているのだと気付いて、パトリックに対して嫌悪感と軽蔑の気持ちが湧き出てきたのを今でも鮮明に覚えている。


少しでもドウェインが褒められたり、話題が出るだけで口から毒を吐き散らすパトリックに呆れていた。


そんなガイナ王国では特殊な方法で国王を選んでいた。


それは国民への貢献度と三大公爵の票を、より多く集めた方を国王とすること……長子の学園の卒業パーティーが終わり、成人するのと同時に次の国王が決まり王太子として振る舞うのだ。


一見、長子に優位に見える制度だがそんな事はなく王子達は幼い頃から三大公爵の子供と婚約して票を集めたり、魔法がより優秀な者を後継ぎにする。

魔法を使う貴族達を纏め上げる為には必要な制度だった。

勿論、王女が生まれても同じだった。


しかしパトリックは最初から『自分が国王となる』と信じて疑わなかった。

何故ならば自分こそが王族として相応しいからと。

ドウェインが毒魔法を持って生まれた時点で決まっているから、と……。

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