ここは異世界?

いきなり世界が変わった。目の前には、草原が広がっている。


 着ている物も、スーツでは無くなっていた。


 ベレー帽に、上下、赤や緑色が入った、派手な布の服。革の靴を履いている。右手には、竪琴。


「ここは……」


 再び、周りを見渡す。


「すみません。すみません」


 反対側から、声がした。振り返る。そこには四人の若者がいた。


 魔法使い、戦士、弓矢、そして勇者。


「あの、とっと終わらしたいんで、いいですか?」


 女神同様、若者も苛立っている。


「あっ、はい。よろしくお願いします」


「そちらは棒読みでいいので」


 勇者は、上を向いた。


「始めますよ」


「ちょっと待ってください……はい、OKです」


 勇者はいきなり、私に迫ってきた。そして、両肩を強く押した。私は、尻餅をついた。


「お前は、今日でクビだ!」


 勇者がやっている事は、本気なのか演技なのか、私にはわからなかった。


 すると、目の前に、小さな画面が現れた。


 ど、どうして……


 「は?」


 天の声から、指導が入る。


「すみません。台詞を言ってください」


「え、これを私が言うんですか?」


「はい、お願いします」


「あの、どういう風に……」


「棒読みで」


「さっき言ったでしょ」


 勇者は、さらに苛立っている。ため息をついている。私だって、ため息をつきたい。


 いきなり、こんな所に連れてこられて、こんな事をしろだなんて。


「すみません、お願いします」


 再度、天の声から指導が入る。


「ど、どうして……」


 棒読みで言った。


「はい、ストップ。えーっと……仲間の体がおかしいので、修正しますね」


 チラリと見ると、確かに弓矢の腕の関節が、逆になっている。それと、戦士の顔。口と鼻の位置が逆になっている。二人は平然と立っている。


 「ひぃ」


 私は後ずさりした。幽霊や妖怪などを見た恐怖ではない。現実をねじ曲げたような恐怖だ。


「それと建物ですね」


 近くに民家があった。窓がない。よく見ると、地面に窓があった。煙突が、宙に浮いている。


 なんとく、理解できてきた。こうやって、バグを修正していくのだろう。あと何個あるのだろうか。


「はい、ありがとうございます。では次ですね。四人は、土下座をお願いします」

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