吟遊詩人で魔王を倒せ。という設定? えっ、与えられた使命はバグ修正? どうして私は、ここにいる。

あしかや 与太郎

女神

「起きなさい、起きなさい」




 優しいその声に、私は目覚めた。ゆっくりと目を開ける。真っ白だった。




「ここは?」




 上半身を起こす。何もない、真っ白な空間。




 起き上がる。不思議と怯えなかった。現状を受け入れられた。




 スーツを着ていた。右手には、カバン。確か、会社に行く途中で、駅の向かっていたはず。




「起きましたね」




 声のする方に、体を向ける。目の前には、ギリシャ神話に出てきそうな、一人の女性がいた。




 常に整えているのだろう、綺麗な足の爪。ほっそりとした足首。




 細すぎることもなく、無駄な筋肉もついていない、ふくらはぎ。




 何より、ハリのある太もも。添えるように、細長い右手がある。




 豊満なバストは今にも――




「おい」




 顔の方を見る。女神は苛立っている表情をしていた。




「……はい」




 今更気づいたが、女神は大仏のように、横になっている。




「あのさ、今からあんた、吟遊詩人だから。バグ修正の吟遊詩人」




「バグ修正? 吟遊詩人?」




「詳しいことはさ、天の声に聞いてよ。で、これから異世界に飛ばすから」




 女神は、上を向いた。




「ねえ、まだなの!」




 目線を上に、怒気を含みながら話しかける。私も同じように、顔を上に向けた。




「あ、ちょっと待ってください。はい、OKです。お願いします」




 女神はため息をつきながら、こう言った。




「ステータス、オープン」

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