第2話 俺たち兄弟とクラーク姉妹とのお茶会。
カチャンッまたしても、ソーサーの上にティーカップを置く音でハッと我に帰る俺。
先ほどより、少し大きめの音がした。
(ヤッバッまた現実逃避してた…)
「エース様…私そろそろ失礼致します。カリム様もまだ戻らない事ですし」
明らかに怒っている声、やっちまった感丸出し…このまま帰らせたら俺が兄に殺される。
「ベル嬢。退屈させて申し訳ありません。そう言わずともじきに兄も帰って来ますので」
フッとほくそく笑みを浮かべる彼女、俺はこの笑顔が嫌いだ。
待てよ?そもそも何故俺は彼女が苦手なんだ?
ベル嬢。夜明け前の色をしたラベンダーの長い髪に紫水晶アメジストの瞳。左の口元には男心を
世の男性なら彼女の魅力の前では、敵わないだろ。無論、兄もその内の一人に過ぎない。
(だかっしかーしっ!俺は違うっ!)
「エース様がそう仰るのなら、もう少しだけ居ます。貴方様の立場もお有りでしょうから?」
それよっ!それっ!その笑顔っつーの?その上から目線で人の心を見透かす様な言い方とほほ笑みっ!
俺が苦手な理由が分かった…様な気がする。
「あははっ…流石はベル嬢には敵いません」
どれだけ笑顔を作っても、俺の心理バレバレなんだろうけどね?
(頼むよ兄貴ぃ早く帰って来てくれよ)
そう願いつつもさっきから会話が弾まない。
(つ…辛い。会話に間がもたねぇ)
幾らエースに憑依したからと言って前世での記憶は有る。
前世の俺なら、ゲームの話しやらテレビドラマ。後…歌番とか取り敢えず何かしら話題は有った。
けど…ここの世界ではそんな知識は皆無だっ無いに等しい。
ゲームの話しとかドラマの話しをした所で、彼女の事だドン引きするに違い無い。
姉貴…どうせなら冒険物の話しを書いていて欲しかった…ってこればかりは仕方が無いか。
(今更だよな…ハァ…)
そんな無の空間に近い、俺とベル嬢の間に一つの光がさした。
「ベルにエース様っ間に合って良かったわ。お茶まだ大丈夫かしら」
「アッアリス姉様?何故ここに…今日お買い物が有るとお聞きしましたが?」
「えへへへーっ急いで済ませて来ちゃった」
「こんにちはアリス嬢。どうぞ、まだ大丈夫ですよ。貴方の分も直ぐに用意します」
「こんにちはっエース様っありがとうございます!やったぁ丁度喉が渇いていた所なんです」
「もうっアリスったら!はしたないわよ」
「あっあらっごめんなさい。だって…喉が渇いていたから」
「あははっ別に構いませんよ。元気が有って良いじゃありませんか」
俺の何気ない言葉に静かに睨むベル嬢、言葉にこそ出しては無いが。
「アンタは黙っててっ!」って言われている様なそんな視線が俺に突き刺さる。
(はははっ…怖くて目を合わせれねぇ)
このアリス嬢。確か…姉貴のネームでは、ベル嬢の双子の姉さんだったよな?
髪の色も瞳もザッ双子って感じなのに、全然タイプが違う。
あれ、良く見ると口元のホクロが無い?
「ヘーフひゃま。なんれふの?私のくひに何かふぃてまひゅ?」
「えっ!あっ…いやっ美味しそうに食べるなと思って」
モグモグと口にケーキを含み、気が付けば二つ目のケーキを手にしていた。
(小学生か…?)
「もうっ!お姉様ったらっ!!食べ物を口に含みながらお話しし無いでってあれ程仰っているでしょ?お行儀が悪いわ!」
「はーい…」ゴックン「ごめんなさい」
(…いつも言われているんだ)
妹に注意されしょげている姉のアリス嬢。可愛いじゃん。
見た目も可愛いけど、それより中身が可愛い。
妹のベル嬢と違って、表情をコロコロ変える姉のアリス嬢。
うん可愛いまるで小学生つうより…近所の豆柴の「タロー」を見ているかの様だ…タロー元気にしてるかなぁ。
あの見事な迄のクルンとした尻尾を千切れんばかりに振ってくれていた。
タロー…。スンッ…タローに会いてぇ。
姉のタロー…いやいやっ!アリス嬢の突然の乱入で、この渇いていた砂漠に潤いが出来た…は言い過ぎた。
何にせよ助かったには変わりは無い事は確かだ。
兄が帰って来るまで俺の胃が限界に達する所だったから。
ザッザッザッと芝生を踏む足音がもう一つ俺の後ろの方から聞こえて来た。振り向くと、そこには仕事で遅くなった兄がご帰還していた。
「ベル嬢。おや?アリス嬢もお越し下さっていたんですか?お二人共遅くなり申し訳無い、意外にも仕事が長引いしてしまって大変お待たせしました」
仕事から帰って来て直接中庭にやって来た兄。
スタイリッシュに二人の令嬢に一礼しては、俺の隣りに座る。
(流石は公子様だよ。何の問題も無かっなかの様にちゃっかり座ってるし)
「いいえ?大丈夫ですわ?カリム様。弟君のエース様が、私を退屈させる事無く楽しませて頂きましたので、それよりもカリム様もお仕事お疲れ様でございました」
(いうよねぇ〜っそんな事、微塵も思って無いくせにいうよねぇ〜)
「えへへーっ私は途中参加です。カリム様お仕事お疲れ様でございました」
「そうですか?ならば良かったです。何せ不甲斐ない弟ですから、貴方に不便させているのでは…と思っていた所でした」
(いうよねぇ〜っだったら最初から仕事と茶のダブルブッキングすんなっつーの)
あら?もしかして、ベル嬢。俺に気を遣ってくれたのか?
いや…違うな?退屈な所何故か棘の有る言い方だった様な。
それから仕事から帰って来た兄も、ティータイムに参加し出した。
まっ元々、兄とベル嬢の約束だったし?仕事に行っている間の兄の繋ぎだったから?良いっつちゃ良いんだけど?
…抜け出すタイミングめっちゃ外した…てかどのタイミングで抜け出すか分かんねぇ。
やっぱ兄はこう言うお茶会てぇの?には慣れているのか、あのベル嬢との会話に華を咲かせている。
ベル嬢も、俺の時とは違い良い笑顔だ。
そんな俺を察したのか、姉のアリス嬢が、俺の袖をツンツン引っ張っては。
「エース様っこのケーキとても美味しいですね?」
と、口にクリームを付けてはニコッと言うよりニパッと笑い掛けて来た。
そのまるで本当に、豆柴タロー…そのものって俺も大概失礼だよなっ。
「ブッッ」
最初に吹き出して笑ったのは俺では無く、兄の方だった。
俺とは初対面の頃から、現在までポーカフェス?保々「無」に近い表情しか見た事が無かった兄が「ブッッ」と言う擬音を出して吹き出す所を見るのは初めてだったから。
(マジかっこの人こんな風に笑うんだ)
俺だけじゃ無い、ここに居る全員が、吹き出して笑う兄に一同驚きを隠せないでいた。
「カリム様が、こんなに笑う所初めて見たっ!」
アリス嬢も、兄が笑った事が嬉しいのか、はしゃいではニパニパしながら喜んでいる。
その、はしゃぐアリス嬢を、妹のベル嬢が顔を赤らめては、少し叱る様な口調で彼女の服を引っ張る。
「アッアリス姉様ったら!カリム様に失礼ですわ!そんな人を馬鹿にした様な事を仰るもんじゃなくよ」
アリス嬢は、ハッとなり兄に「ごめんなさい…決してそう言う意味じゃ無く本当に嬉しくて…つい。カリム様ごめんなさい」
すっかりしょげてしまったアリス嬢、そんなアリス嬢を見て、兄もフッと笑顔を浮かべては。
「全然っ気にしないで下さい。アリス嬢。本当に貴方は面白いお方だ」
この兄の笑顔と台詞に対して明暗の差が出来ていた事を…多分俺しか知らないだろうな。
♦︎♢♦︎♢♦︎後書き♢♦︎♢♦︎♢
ここまで読ん頂きありがとうございます。
読みづらくて申し訳無いです(>人<;)
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