サクッと読める短編小説

コウイチ

不謹慎なニュース

 優雅な休日を送ろうと思い、早起きをしてファミレスのモーニングを食べに行った。店内で若い人は僕だけで客のほとんどが暇を持て余した老人だった。


 そんなことは気にせず、店員に注文をしてスマホでニュースを眺める。そしたら死亡事故の記事が目に入った。車に跳ねられた歩行者が飛ばされた末に民家の塀に突き刺さり、串刺しになって死亡したとのこと。


 一体どんな事故なんだと思い、詳しく調べてみた。

 すると怪しいサイトに事故の瞬間を捉えた映像がアップされているのを見つけた。


 良くないものだと思いつつも好奇心でその動画を再生。すると記事の通り、車に跳ねられた歩行者が人形のように何メートルもふっ飛んだ末に民家の塀に串刺しになって死亡した。


 僕は不謹慎だけどそれを見た瞬間に笑ってしまった。だってあまりにも映画のワンシーンみたいで可笑しかったから。

 良くないことだとわかっていてもこれは笑ってしまうだろう。周囲の客の目が痛い。


 その直後アラームの音で目が覚めた。どうやら夢だったみたいだ。僕はファミレスにも居ないし、今日は休日でもない。


 そして時計を見てゾッとした。なんと遅刻ギリギリの時間だ。急いでコートを羽織り、髪も整えずに家を出た。今なら走ってギリギリ間に合う時間だ。いっそのこともっと寝ておけば遠慮なく遅刻ができたのに。


 僕は電車を逃すまいと道路に飛び出た。

 その瞬間に一台の乗用車が物凄い勢いで僕にぶつかった。

 全身に走る衝撃。

 スローモーションで僕は宙に浮かぶ。

 上か下かもわからない。

 驚く運転手の逆さまの顔が一瞬だけ目に入る。

 

 僕は数メートル吹き飛び、民家の塀に突き刺さった。間違いなく即死だろう。

 こんな間抜けな死に方をしたらニュースで笑われてしまう。

 薄れゆく視界の中ですぐ先に監視カメラが見えた。


 あのカメラの先では僕が笑っている。

 休日のファミレスでモーニングを待ちながら。

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