Don't say 叶わない恋

砥石 莞次

第1話

私はどうやらムボウらしい。好きになる相手がみーんなイケメンで、王子だとか国宝だとか言われるような人ばかりだったから。でも、それが無謀(調べたらこう書くみたい)だって言われる意味が分からない。そうボヤくと、友だちは呆れたような顔をする。


「アンタねぇ、叶わない恋をするってことが無謀なの」

「叶わない恋って。分からないでしょ? 梶くんに彼女がいるわけでもないんだし」

「彼女はいなくても、あの人は無理だって。住む世界が違う」


住む世界なら問題ない。同じ日本に住んでいる。なんなら、同じ地区に住んでいるし、同じ学校に通っている。でもって、同じクラス。

なんて言ったら、友だちはいつものように、「そういう問題じゃないんだって」と怒るだろうから黙るしかない。何より「叶わない恋」と言われるのが嫌だった。


「それにさ、思い出してみてよ。稜華の恋が、一度だって上手くいったことある?」


梶くんの前は藤くん。その前は青山くん。更にその前は石川くん。右京くんに佐藤くん、永田くんに棚橋くん。それから……。

友だちが指折り数えながら名前をあげる。その誰とも、私は両思いになれたことがない。努力して、勇気を出してアピールして、それでもダメだった。いつも決まって、「お前と話すのは楽しいんだけどなぁ」と含みのある言い方をされる。だったら付き合ってくれてもいいのに。そんな言葉を、数えきれないほど飲み込んできた。


「いい加減に、叶わない恋はやめようよ。イジワルで言ってるんじゃないからね。アンタが心配だから言ってるの」


決まって最後は、友だちのこのセリフで締め括られる。私が叶わない恋をして、無謀にも告白なんかしちゃったりして、心に深い傷を負わないように。分かってるけど、そう言われるほどに燃えてくる。絶対に両思いになってやるって。だけど、現実は上手くいかない。叶わない恋と言われた通りに、本当に報われないのだ。

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