みんな、だいすきだよ
美咲☆@
第1話
私の名前は結愛(ゆめ)という。
多分、きっと、裕福な家庭で育ったと思う。
毎日仕事が忙しくても定時に帰ってきて一緒に食事を取ってくれる父と、料理も掃除も難なくこなす専業主婦の優しい母。
そんな2人に囲まれて、順風満帆な日々を過ごしていた。
……はずだったのだが、
私が8歳になる頃、それは一転した。
その日は休日だったと思う。いつもの雰囲気と変わらないリビングで外出した両親を待っていた。
子供向けの番組がやっているのを横目に、父と母、そして私の家族絵を描いていた。
案外上手く掛けた、それが凄く嬉しくて
「パパとママ、早く帰ってこないかな?」と首を長くして待っていた。
すると玄関の鍵を開ける「ガチャ」という音が、静まり返った家の中に響いた。
嬉しくなって急いで階段を駆け下りる。
でもそこに居たのは見慣れた顔と、私の知らない顔だった。
(パパ、ママ、男の人たち……?)
くっきりとした顔立ちの2人の少年。
背丈は私より遥かに高い。
神妙な面持ちでこちらを窺う2人の少年に、少しながら恐怖を覚えた。
「おにいさんたち、だあれ?」
2人の少年は少し驚いたような顔でこちらをばっと一斉に見た。
少し怖くなって目を逸らす、と同時に父が一言こう言った。
「結愛ちゃんのお兄ちゃん達だ。仲良くね。」
意味が分からなかったのは多分言うまでもない。
だってお兄ちゃんっていうのは一緒のお母さんから生まれて小さい頃からずっと一緒の人を指すのに、この人達はまるで初対面。
初めてあってその日にお兄ちゃんになった人達のことなんて、お兄ちゃんとは思えなかった。
そして茶髪に青白い眼をした少年が私を睨むように数秒間見つめてきた。
もう片方の白髪の少年は瞳を閉じて俯いているのが分かる。
体感では数分くらいだろうか、沈黙が続いた後、それを破ったのは母だった。
「みんな、お腹すいたでしょ?お寿司を取ってあるから上で食べましょう。ね?結愛、樹輝、悠羽也?」
「は、はい。」
白髪の少年は目を開けて母を見た。
その視線が妙に物乞いをしているように見えて嫉妬したのを覚えている。
母は何があっても私だけのものなのに、母から生まれたのは私なのに。
部外者が母のことをまるで本物の母親であるかのような目で見るのはなんとも言えない苦痛があった。
開かれた白髪の少年の瞳は青緑色だった。
まるで外国から来たみたいで少し日本人離れした顔立ち、それに髪色。
黄色掛かったふわっとした白髪、それに白い肌の組み合わせがとても神秘的だと感じた。
でも褒めている訳では無い。
母のことを本当に取られるんじゃないか、そう考えるだけでこの美しい見た目が天使の皮を被った悪魔に見えてきた。
私は思わず言ってしまった。
「いやだ」
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