短編:政府は童貞税法を閣議決定いたしました。

まこまこ

第1話:童貞税導入

 いきなりのことだった。朝起きたらテレビから、童貞税の導入が決定したというニュースがどの番組を見ても流れていた。部屋で先にテレビを見ていた母が俺にふざけて聞いてきた。


「あんた!童貞税だって(笑)あんたはどうなの?」


 まったくもってデリカシーのかけらもない母にいら立ちを覚えるが、ここで童貞か否かの質問をされ精神を乱すようでは歴23年の童貞とは言えないだろう。


「ど、ど、童貞ちゃうわ!!」

「はいはい(笑)」


 少し動揺してしまった。


 第一、童貞税ってそもそもどうやって調べるんだ?聞き取りか?いや曖昧過ぎるな。女性器に関する知識で試験でもするのか、いやそれも事前学習で準備可能だ。


「こんないくらでも嘘をつける税を導入しても意味ないだろ」

「あら、あんたしっかり報道見てないわね」

「は?」

「あんた、赤ん坊の頃マイクロチップを体のいろんな所に埋め込まれたでしょ?そのデータを利用するみたいよ」


 まじかよ。そんなのありなのか?マイクロチップは元は健康、防犯の観点から21xx年以降に生まれた乳幼児全員に埋め込まれたものだ。それが今、人権100%無視の使われ方をされている。


 しかし、それでもよく分からない。マイクロチップのデータをどう活用するんだ?俺は恐る恐る童貞税を淡々と説明しているテレビを見た。


『えー、マイクロチップはですね。大容量データの書き込み、動態検知機能、GPS、他者のセンサーと自分のセンサーの詳細な位置関係を把握できるとても高度な技術を持ったものなんですね。』


『えー、つまり、これらの要素を組み合わせることにより、これまで他者この場合異性とどういった接触をしてきたかすべて把握できますし、その密着度や性行為の体位、持続時間まで把握できます。』


『えー、そしてまずこの法案も23歳以上からということで学生の年代を避けた法案となっており、ターゲットとなるのは主に社会人なんですね。』


 さて......今年いくら税金で引かれるんだろうな、俺。

そんなとんでもニュースを朝から目にする羽目になって気が滅入ったが仕事に向かう時間が迫っていた。


「はぁ会社行くのも嫌になってきた。休もうかな。」


 逆に休むと童貞と思われると考え、結局俺は会社に向かった。









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