第9話   婚姻無効

 わたくしは、晴れて、マリアーノ・クリュシタ伯爵令嬢に戻ることができた。


 離婚審査に1年半かかり、審査の結果、この結婚は、詐欺行為により婚姻無効となった。


 細かく書かれた侯爵様の書類がそれを証明した。


 異例な白い結婚。審査員は刑事罰に相当すると当事者のアンテレ・インテレッサ侯爵令息を指名手配したけれど、平民に下りていたアンテレ様を探し出すことができずに、審査期間が長くかかった。けれど、戸籍は汚れずに済んだ。


 異例の白い結婚詐欺事件として世間で騒がれて、一時期、新聞記者がわたくしを追い回したこともあったけれど、わたくしに専属騎士がつき、その都度、排除された。


 裁判の間に、嫁ぎ先のインテレッサ侯爵様の事業もまた傾き、結局、自己破産手続きを行い、爵位返上し、インテレッサ侯爵家は取り潰しになった。


 アンテレ・インテレッサ侯爵令息は、いつの間にか市井へと下ったとインテレッサ侯爵当主様がおっしゃっていた。


 一緒にネアン殿も行ったという。


 追われる身ではあるが、晴れて二人は自由の身になり、一日中抱き合っていても誰にも文句は言われないであろう。それに、結婚をすることができたのではないかと思った。


 学生時代からお付き合いをしていたのなら、もっと早くに一緒にさせてあげれば良かったのにと思ったけれど、ネアン殿のご実家も貧困でいらしたようだ。


 インテレッサ侯爵様が自己破産申請した後を追いかけるように、マッシモ子爵も自己破産申請を行い、爵位返上したと聞く。


 わたくしの婚礼の悪評も後押しをしたようで、自業自得と言えるとも思うが、巻き込まれた者も多くいたので、やはり気持ちのいい物ではない。


 王妃様は報道される記事を読み、わたくしを心配してくださり、時々、お茶会に誘ってくださった。


 母が亡くなっても、わたくしを気に掛けてくださる優しい王妃様に、話題なっている白い結婚の話をしたり、今手掛けている化粧品のお話をしたりと話題は尽きません。


 王妃様のお茶会に行くと、第一王子や第二王子もお茶会に顔を出してくださるので、とても楽しい時間を過ごせます。


 わたくしが取り扱っていた化粧品の試作品に異常は見つからず、大量生産をする準備を始めました。


 陶器の入れ物は、可愛らしい物ができました。陶器製かガラス製かと悩んだオイル関係の入れ物は、安く外国から輸入できて、それを使うことにしました。


 色は予定通りの赤で、とても新商品にインパクトを与えるような仕上がりになりました。


 製品はわたくしが16歳になった頃に工場で、大量生産を始めました。


 お店は貴族が多く住むタウンハウスがある貴族街に、店を構え、もう一つ平民街にもお店を構えました。


 内装はローズ色と白を合わせた可愛らしいお店にしました。


 薔薇をあしらって、商品のイメージを外装からも感じられるようにしました。


 商品棚は白で、清潔な印象受けます。


 お店ができあがったのが、半年後、それから、店頭に商品を並べました。


 接客する従業員は我が家のメイドと供に、我が家で練習をさせ、お店の準備ができる頃から貴族街のお店で訓練しています。


 母はいない。わたくしも学校に通わなかったので、お友達はいない。


 わたくしは、父と一緒に王妃様を訪ねて、やっと理想の化粧品ができたので、お試しくださいと王妃様に、商品を献上しました。


 10歳の頃、王妃様に化粧品のことを教わったことを覚えていてくださり、試してみますと言っていただけました。


 お店は完成したが宣伝ができないと相談すると、王妃様はパーティーを開いてくれると言ってくださった。


 そのパーティーで存分に、商品を宣伝しなさいと言われ、父と共に、感謝を述べた。


 母の葬儀の時に、お忍びでお見舞いに来てくださった王妃様は、わたくしのことを我が子のように心配してくださった。そんな王妃様の為にも、失敗はしたくはありません。


 一ヶ月後のパーティーまでに、試供品をたくさん作り、配れるようにお洒落に包装しました。


 これで売れなければ、わたくしの事業は失敗になるが、わたくし自身の肌は、とても美しくなっていた。


 モデルになれるように、父はドレスを新調してくださった。


 パーティーには、クリュシタ伯爵家の使用人も研究所で働く者も参加して、大勢の人に試供品が手渡るように、皆には礼儀作法の練習もいたしました。


 いよいよパーティーが始まります。



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