ターン1 魔王エンド
「勇が怪我をした!?」
そんな馬鹿な。最強の異能者で、勇者の称号を持つ勇が!?
今度は私が医務室まで走る番だ。
果たして、勇は医務室で横たわっていた。
「勇!」
「そんな顔すんなよ」
「誰にやられたんだ」
「魔王ライトシャドウって言ってた。それに、魔王が他にもいるみたいな事を言ってた」
「魔王……ライトシャドウ」
だめだ。
だめだだめだだめだ。
勇の隣に立つのは私で。
それができないなら、勇の真正面に立つのは私だ。
ポッと出の他の魔王なんかに、勇は殺させない。
だから、他の魔王は……殺す。私が殺さないといけないんだ。
私は、雫族にポーションのお香を作らせてセットする。
これならバレずに傷を癒せるだろう。
私は情報を集める。
和国の浮遊大陸。
月基地。
今の所、その二つがわかっている魔王の拠点だ。
他にも、動画それっぽい動画が三つ。
魔法少女の動画。
勇族の動画。
蟲族の動画。
残念な事に、私は月基地や浮遊大陸に行く手段を持たない。
宇宙関係は、古の魔王ガチャでないと使えないらしい。
なぜなら、現代魔王ショップでは売ってないからだ。
一応、シャイニングスター国でも妖魔の捜索を始めたらしいが……。
そんな時、兄が訪ねてきた。
そんな暇ないのに。無能力者の軽蔑する、そして心底羨ましく思う兄は、私を見てはぁ、とため息をついてしゃがみ込んだ。
「お前も魔王かよ。なら助けは必要なさそうだな」
「まさか、兄さんも?」
「あー。まあな」
「ならっ……! なら、宇宙船か宙行蟲は当たった?」
「ああ、それならあるけど。どうして?」
「友達が、他の魔王に怪我をさせられたんだ。どこの誰か知らないけど、許せるものではない」
「あー。魔王のヤンチャっぷり凄いもんなぁ。でも、月基地や浮遊大陸まで1人で殴り込みに行くつもりか?」
「そうだよ」
「多勢に無勢だ」
「でも!」
「お前も魔王なら、魔王らしく戦えよ」
「魔王、らしく?」
「そうだな。ガチャは何が当たった?」
「手札は簡単には明かせない」
「宙行蟲と情報で交換」
「っ わかった」
「まず、領地を創っちまえ。マジックシールドとプロテクトで守って、ダンジョンを設置。お前も軍団を育てるんだ。そうだな。とりあえず、魔族、雫族、蟲族、武族、体族の五族の軍団を買え。ショップアイテムもな。後はダンジョンで勝手に鍛えたりアイテムを拾ったりしてきてくれる。魔王ってのは戦いゲーじゃない。領地運営ゲーだ」
「それでなんになるっていうんだ」
「宇宙開発させるんだよ。大体、魔族と雫族をセットにして、たっぷりとした資源を用意しつつ魔力を垂れ流しにしておけばお前の好きな方向に文明を発達させてくれる」
「悠長な……」
「悠久の時を生きるんだから、当然だろ。騙されたと思ってやってみろ。どうせ方法わからなかったんだろ」
「でも、今、友達が襲われてるんだ」
「シャドウデーモンでもつけとけ。俺もそうするつもりだったし。何をするにもレベルを上げないとどうにもならんぞ。あと、回復アイテムは用意しておけ?」
何を悠長な。そう思う。でも、確かに、レベルを上げないと、他に5人も魔王がいるのだ。
落ち着いてみたら、どうして気づかなかったのだろう。
古の魔王は兄だと、すぐにわかった。魔力の濃密さが違う。私とは格が違う。
私は、言われた通りにする事とした。
でも和国らしい魔法少女の動画は調べておこう。
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