古の魔王と5人の現代魔王と3人のこの世界の魔王と勇者様。世界が壊れちゃうううううっ!

@yuzukarin2022

ターン0 古の魔王ラベラトス

 魔王オンラインは魔王になって人間を支配するゲームである。

 だが、大抵は人間を尻目に宇宙開発に邁進する。魔王オンラインはそれが出来る自由度の高いゲームなのだ。というか、最初はささやかなおまけ要素だったのだが、そっち方面で人気が出過ぎてもうどの方向に向かっているのか誰にもわからない。エイリアンも複数種用意してあり、もうそれ、惑星開拓想定のゲームでしょ? と言う有様。

 俺は、それにかなり嵌っていた。


 プレイヤーの名前は、宇宙の旅人……スペーストラベラー。逆から読んでラベラトス。島の名前は有名すぎるあの組織を捩ってニャサ。

 

 後発組だったのもあり、課金パワーを駆使しながら、駆け上がっていった。

 全盛期に参加したのもあり、かなり楽しかったが、いかんせんどんなゲームにも終わりはある。

 愛されに愛された魔王オンラインだが、やりたい事もやり尽くされて、ゲームは終わりに向かっていった。

 

 サービス終了の日は燃えるイベントだった。

 全ての魔王の力を使って、宇宙災害を食い止めろということで、全てのプレイヤーに専用の宇宙船が配布された。そして、全軍出撃となったのだ。ログインしてない魔王も、オートで出撃となった。魔王が消えた後は魔力がなくなるということで、魔王が戻る日まで封印されるか、魔力石を貯蓄するか、両方の対策をとるかの選択もした。俺はもちろん両方だ。プレイヤーがログインしていない場合はオートで魔力石の貯蓄となった。なんと、次回作では封印を選んだ国が登場するというのだから、封印を選ぶ以外に道はない。出演許可証にもいそいそとサインした。

 やる事がなくてオワコンになってしまったこのゲームだが、その為だけに戻ってきたプレイヤーもいるほどには愛されていた。ハイになった俺達は、勢い込んで宇宙船に乗り込んで、宇宙へと飛び立った。

 そして、意気揚々と宇宙空間に飛び出して布陣していった。

 魔王なので宇宙空間でも平気なのである。

 

 

「全軍出撃! 全軍出撃!」

「物理的に燃えるぜぇぇぇぇぇぇ!!」


 宇宙嵐の中、凄まじい勢いで飛んでくるいくつかの石があった。

 そして、小さな石の欠片がジャーシン様の防壁にそれがぶつかると、ジャーシン様が実体化して吹き飛ばされてくる。


「いかん! まだ魔王砲が!!」

「あんな小さい石で邪神様突破とかwww」

「俺に任せろ!」

「ジャーシン様の防御壁を突破された! 今!! プレイヤーが運営を越えるとき!!」


 俺を含む何体かの魔王が、ジャーシン様や魔王砲を庇い、その前に躍り出る。


 そして、石が貫いた瞬間、とてつもない痛みが俺を襲った。それは真っ先に前に出た俺を連続して襲った。


「ぐああああああああああああああああ!!!!!!」

「なんだ!?」

「いったーい!」


 悲鳴がいくつもあがる中、俺の意識は薄れていった。

 

 


 













「っは!! 夢か……。え? あれ? どこだここ」


 まるで今の状態が夢のような、不思議な錯覚を受ける。

 段々と頭がはっきりしてくると、夢の記憶と現実の記憶が統合されていく。その中に、解せぬものがあった。

 魔法の知識だ。まるで、本当に魔法が存在するかのようではないか。

 いや、それを言ったら妖魔なんて存在もあり得ないのに実際にいる。

 いや、俺は何を言っているんだ? 何が嘘で、何が本当?


「勘弁してよ、ジャーシン様……」


ーー目覚めたか、ラベラトス。無事目覚めて良かった。


 かつて聞き慣れたNPCの邪神様の声が聞こえた。えっ 幻聴?


ーー幻聴ではない。そして、汝はもうプレイヤーではないし、我は運営ではない。汝は魔王で、我は邪神。あのエネルギー体は、電子の海を実体化させてしまったのだ。あの時から、1512年の時が過ぎている。


「えっ ゲームの世界に転生ってこと?」


ーーそのようなものだ。しかし、実体化しても、我の役割は変わらない。魔王に相応しき者を見出し、サポートする。我の名はジャーシン……魔王を導きし者。


「えっ それってやばくない?」


 邪神様が実体化とか草も生えない。


ーー危険性は汝も変わらない。数多の魔王が実体化して、大変な事になった。汝が最後に目覚めた。


「ちょっ 他の魔王の事を知りたい! 領地ってどこなんだ!?」


ーー魔王は今、各世界に散っている。汝のように転生した者もいるし、旅立った者もいる。もちろん、あの世界に留まる者もいる。汝の領地は封印状態でアイテムボックスに入れておいた。元の場所に返すも新天地を探してやるも放置するも汝次第だ。


「アイテムボックスって」

 

ーーひとまず、元プレイヤーへの「お帰り魔王様セット」と高レベル魔王への「魔王様に弟子入りセット」と全魔王への「魔王様スタートセット」と元プレイヤーで配下を持つ魔王への「領地・配下応援セット」と各魔王に合わせた「魔王様応援セット」「魔王様のガチャチケット」を配布しておいた。これで現実化には対応できるだろう。


「それは助かるけど……」


ーーそれとこの世界の者を5名ほど魔王に任命しておく。敵対するもよし、同盟を組むもよし、導くもよし、楽しい魔王ライフを送るといい。我が名はジャーシン……


 ジャーシン様の気配が遠ざかる。


「……勘弁してよ、ジャーシン様」


 ベッドから起き上がって、ガッチガチに隠蔽魔法を使ってから大学へ行った。

 今更バタバタしても仕方ないので、まずは調査からだ。

 俺は帰り次第、すぐにパソコンに齧り付いてニュースをざっと漁った。


 かつていた故郷の国に酷似した世界に転生したのは幸運だった。

 並行世界という奴だろうか。

 歴史や技術力などは大分違っているが、メンタルや文化はさほど変わらない。


 魔王様スタートセットにかつてのゲームをしていた時の言葉を魔王語として全魔王にインストールを入れてくれたのはありがたい。これで言葉が通じないということはない。


 動くのは大学卒業してからかな。

 まだ大学2年生だし、他の魔王達もしばらくは大人しくしているだろう。




 三日後、俺はニュースを見て度肝を抜かれることになる。

 即座に月に前線基地作るやつが現れるなんて、普通思わない。

 現代兵器に勝てるとでも? アグレッシブだなぁ……。

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