第17話 すぐ隣にある闇

今日は私ヨウコの身に起きた最近の事件についてお話ししようと思います。


神様がいるということは同時に魔がいるということでもあるのです。魔物はとても巧妙に心に入り込んできます。誰にでも起こるすぐ隣にある闇なのです。


私たちは5人グループで一緒に神社巡りをしたりしながら神様の話が心置きなくできる仲間でした。

世はスピリチュアルブーム。でも、まだまだ、神様が降りてこられたと話して信じてもらえる人は少ないのです。縁あってこのグループは異世界のものが見える人、声が聞こえる人、感じ取れる人たちの集まりだったので、なんの違和感もなくそんな話ができるのが楽しかったのです。


その仲間が、今年に入ってから、ちょっとしたことから意見が食い違うようになり、ギクシャクし始めました。

以前のように、話していても楽しくない、なんだか、仲たがいさせようさせようとしている動きがあるように思えてならない。お互いに心のうちを探り合うような空気が流れ始めました。


これはおかしいと気づいた二人の仲間が、冷静に観察を始めたのでした。


そこで気づいたのが、一人ずつに、こっそりと「〇〇さんには内緒でね」とささやいている者がいるということでした。


愛犬が死んだのが受け入れられなくて苦しんでいた仲間には、少し関係が悪くなっていた仲間の一人が念を送ったために犬が身代わりになって死んだかのように受け取れる仄めかしをしていました。


またある仲間には、私が最近の雰囲気の悪さにいらいらしていたのを私が闇堕ちしたのではないかと他のメンバーに相談を持ちかけて疑心暗鬼にさせていました。


さらに、別の仲間には不思議な霊能力を授かった。あなたならこの力をうまく使えるからと、あなたにだけ渡すよう神から言われたと巧みに煽りました。


こうして、一人一人に少しずつ少しずつ巧妙に仲たがいの種を植え付けていって、グループでいることが難しい状況に追い込んでいたのでした。


それらのことが分かってきた時、以前から信頼していた巫女さんに相談したところ、彼女にはとんでもない魔物が入っていることが分かりました。このところの不協和音は全てこの魔物が彼女を操ってさせていたことでした。


天照大神様は

「信仰に反くと誘き寄せる事となり、

道理や神仏の教えを別の解釈として捉えると、意味が変わり背徳行為となる。

正しきを見極められないと魔物がやってくる。


世には能力者として活動する人も確かにいる。

その中には

神様にとっても、利のある行動に繋げられる者

はいる。しかしそれは、信仰心がきちんとあるかどうかに関わってくる。


神様にもネットワークというものがあり、

神仏の意に反した行為

冒涜となる行為

神仏を利用した行為

をしたものは、別の神様にも、それは情報となり伝わる。

だから背いた行為をした者には、神様は手をかさなくなる。


能力は本人が気づかないまま

薄皮を削ぐように徐々になくなって行く。

しかし、本人は自分の驕りから気付けない。

そんな状態で霊障案件を引き受けたなら、自業自得の結果として不運と健康被害に見舞われる。」

と言われました。


それは本人に伝えて、自分の中にいる魔物と訣別する決心をしてもらわなくてはなりません。

本人のみならず家族、友人にも影響が及びます。事実、私たちグループの身内に健康被害が出たり、彼女の親戚のお婆さんが亡くなったりしていました。


私たちは話し合いの場を持ちました。

彼女は、小さい頃からいじめられてきており、自己肯定感が低い。今の能力がなかったら、自分には何も価値がないと思っているから、魔物の力を借りてでも能力を維持したい。

力が落ちてきているのは感じてはいるが、過信があって自分で魔物を押さえつけることができる。いざとなれば神様が助けてくれると思っている。

2時間半、説き聞かせましたが、魔物と手を切る覚悟はできず、時間が欲しいと逃げました。そんなに簡単に私たちのいうことを受けいれるとは思っていませんでしたので、今後も根気よく説得を続けるしかありません。


さらに天照大神様は言われました。

「未来はこうして本来は

みんなで作りつなげていくもの。

その機能が低下したから訪れる世紀末というところであろう。


たとえどんな小さな光でも

それがやがて奇跡を産む

その先を見てみたくないか?

争いもなく、尊重しあい守られているという安心感の中で、大切な人と暮らしたくないか?

それは贅沢ではなく、当たり前だろう?

そんな未来のために、戦え」と。


私たちしか彼女を見守る者はいない。魔物はとても狡猾で、神になりすましたり、情に訴えて私たちを取り込もうとする。それが分かったから、彼女が魔物と手を切ると決めるまで見放したりしない。縁あって集まった仲間をあきらめたりしない。いつか、こんなことがあったねと笑いあえる日がきっと来ると信じている。


能力があるということは、ちょっとした奢り、油断につけこまれる危険も身近にあるということ。いや、能力があるなしに関わらず、今まで以上に我が身を律し、縁を大切に誠実に人と関わっていかなくては、闇はすぐ隣にあるのだということを知ったできごとだったのです。


まだ戦いは始まったばかり。

でも私は一人ではない。彼女も一人ではないのです。

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