第92.5話

「で、オーデンという男はガウリンク獄四十年の刑、ナスティという女は『ゼイク十八番・紫』の六階層で迷宮刑です」

「……」

「小隊長、アステル小隊長! 聞いてます?」

「聞いてるわよ。不快な犯罪者の始末が、全部終わったってだけでしょう?」


「……ガイエスか」

「凄いわよね! あの不殺を初踏破よ! しかも単独! 剛胆で落ち着いてて! 男はああであるべきよ!」

「メロメロじゃねぇか、姉ちゃん……」

「でもぉ、あたしのこと、好みじゃないのかも……結構キツ目なこと、言われちゃったし、力任せに振り払われちゃったし……」


「え? 姉ちゃんを……振り払ったのか?」

「うん。腕を組んだら……思いっきり外されちゃったの。初めてだわ」

「あいつ……! いくらなんでも、アステルだって一応女性だって言うのに!」

「ちょっと、一応って何よ」


「いいか、明日、宿の食堂で待ち伏せしよう! 冒険者組合に競り用の魔具を渡しに行くって言ってたから、その帰りなら絶対に捕まる」

「でも……嫌われちゃったら、嫌だしぃ」

「何も言わなきゃ、絶対にあいつはいい気になるに決まってるぞ! 美人の女衛兵を振った、なんて武勇伝にされるかもしれないじゃないか!」

「やだ、もう、美人だなんてぇ」


「あいつには絶対に姉ちゃんに詫びさせて、ちゃんと女性に対しての礼儀って奴を教えてやらなくちゃ!」

「だけどぉ、あんたのことなんか小馬鹿にしてるわよ、きっと」

「年下だからって舐められてるとは思うけどな、ここはビシッと言っとかないとな!」

「ふふん、なによ、結構逞しくなったわねぇ、ディルク」

「まかせろ、姉さん!」


***


「さあ、入れ」

「……ひっ!」

「おまえが今まで犯した罪を、全て思い出させてやる。たっぷり反省しろよ?」

「い、嫌……だ。痛い……」

「何、言ってるんだ。おまえが殺した奴らは、もっと痛かったんだぞ? それに、毎朝ちゃんと【回復魔法】で殆ど治っているだろうが。おまえの『身分証の傷』の数分、ちゃんと喋ってもらわないとなぁ」

「今日からは……ああ、子供殺しの確認っすね」


「じゃあ『下半身』か。『潰す』もん、持ってこい」

「い、嫌だ、嫌だ! 痛いのはやだ! 痛いのはやだ! いやだぁぁぁぁぁぁっ! あ……んぐっぁ……」

「お、おい、どうしたんだ?」


「……死んでるみたいです」

「はぁ? まだ、四日目だぞ? どんだけ弱いんだよ? あと、二十人分はあったってのに、勝手に楽になりやがって!」

「どうします?」

「しょうがねぇな。死んじまったんなら、育成中の迷宮に入れておけ。少しは役に立たせねぇと」


***


「よし……ここでいい。出せ」

「いたっ、痛いわっ! 目隠しを取ってよ!」

「そのまま、ここに居ろ。すぐに方陣札で退避だ」

「「はっ」」



「え? 方陣札? ここ……どこなの?」

(なんだか、蒸し暑い? 気持ち悪い……臭くて)

「目……目隠し……あ、外れ……ひぃぃああああーーーーーーっ! 魔獣っま……がぁぁぁぁっ、あ……ぁ、ぅぐがぁっ……」

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