第62.5話
「……おかしいなー……そろそろ、来てもいい頃なんだがなぁ」
「誰かを待ってるのかい、衛兵さん」
「ああ、ここの地図を買った奴。四日くらい前に」
「あれ? その頃って……受付で間違った地図を売って、大慌てしてた頃じゃねぇか?」
「そうそう、三十五番と別のを入れ違って渡したとか。俺達にも連絡が来てたよな」
「えええっ? なんだよ、そんな事があったのかよっ! うわ、やべっ、ちょっと冒険者組合で確認……あ、いや、先ずは小隊長、かな」
「大変だな、衛兵は上司に聞かねぇとなんもできねぇから」
(いや、四日間もあいつの側にいなかったってのが……まずい。なんか言い訳考えとかねぇとーーー!)
「間違ったの、受付の女だっていってたよな?」
「ああ、解雇だってよ」
「だろうなぁ……組合解雇だと、次の働き口も大変そうだな」
「……娼婦にならねぇかな。そしたら、買いに行くのに」
「女だからって、誰もが娼婦になるわけねぇだろうが」
「さっきの衛兵も、解雇にならなきゃいいけどなぁ。男だと、男娼……か?」
「だから、どーしてそーなるんだよ? 欲求不満か!」
***
「いつまでここに居なきゃいけないの……?」
「……」
「ねぇ、なんか言ってよ」
「………」
「殺す……出たら絶対に、あの門番……ぶっ殺してやる」
「こんな事なら……あのままガウリエスタにいた方がマシだった……」
「あの三人、相変わらずだな」
「女が鬱陶しい……気持ち悪い声で話しかけてくる……」
「ま、犯罪者なんてみんなそんなものだ」
「拘留、明日までだろ? 早く出てって欲しいぜ」
「『刻印奴隷』にするんだってよ。衛兵団も物好きだな」
***
「は? 撒かれたの?」
「なんつーか……見失った……」
「あーあ……もう、しょうがないわねぇ。冒険者組合に問い合わせて、買った迷宮の地図を突き止めて。そのどこかには現れるでしょうし」
「アステル小隊長殿!」
「どうしたの?」
「『イスグロリエストの魔法師』が、カースに現れたとの報告がございました」
「ええっ? カース?」
「何よ、デルムトじゃなくて? カースに単独で大丈夫そうな迷宮なんか、あったかしら?」
「なんでも……デルムトでは、上級の地図まで買ったそうです」
「……? もしかして、取り敢えず地図だけ買って、っていう『情報収集して満足する』傾向の人なの?」
「魔法師ですから……そういう事もあり得るかと」
「なんだよ! 入らねぇ迷宮の地図なんか買うなよ! 紛らわしいっ!」
「慎重に検討してから、迷宮を目指すって事よ。本来、それくらい警戒して当然なのよ、迷宮って。見どころあるじゃない。でも、一応買った地図の場所には、様子を見に行きなさい、ディルク」
「わかったよ、姉さんっ」
「こらっ! 家以外ではちゃんと……」
「はいっ、小隊長っ!」
「……もうっ」
「それと、例の三人、刻印奴隷としてであればカトエラで雑用係として使いたいと」
「解ったわ。手配して。そこそこ需要があるのね、あの犯罪者達でも」
「惜しげのない者達ですから、使いやすいのでしょうね」
「ふん……犯罪者の使い方としては、悪くないかもね。冒険者組合の組合総長と、知事にも進言してみようかしら。あたしも、これからカースへ向かうわ。方陣門と魔石を準備してもらえる?」
「はいっ!」
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