第12.5話

「オーデン、お願いよ。あたしを、あたしを助けてよ……!」

「ま、待て、ナスティ、服を着てくれ! 頼むから」

「助けてくれるなら、あたし、なんでもするからっ!」

「服を……!」


「はーっははははっ! 駄目だ、可笑しすぎてっ!」

「リーチェス!」

「おまえ、ほんっとうにくっだらねぇ女だな! 身体使えば、男は言うこと聞くと思ってんのか? おめーの身体に、そんな価値があわけねぇだろうが!」


「……っ」

「ああ、それともローエスで大勢の男に相手にされて、結構嬉しくて勘違いしちゃったか? あの時の男共が、あとでおまえのことをなんて言ってたかも知らずに!」

「リーチェス、もう止めてやれ」

「『今まで買った物の中で、一番最低の買い物だったぜ』だってよ!」

「……うっ、ううっ……」


「それにな、おまえだけじゃ足りなくて、マグレットも貸してやる羽目になりそうだったんだぜ? まぁ、あいつの首飾りでどーにか足りたけどよ」

「!」

「リーチェス……マグレットがいなくなって荒れてるのは解るが、もういいだろう?」

「うっせぇぞ、オーデン! あいつのことなんか、どーでもいいんだよ。ちょっと優しくしたら、俺に説教めいたこと言いだして! 俺の言葉を遮って! 俺に『馬鹿』なんて言いやがったんだぞ? しかも魔法まで惜しみだした! 俺のモノにしてやったのに図々しい女!」


「……あんた……異常よ……」

「は? おめーだって同じだろーが。男と見りゃすぐにしな作って似合いもしねぇ言葉使って。ああ、初めの頃は、あのガイエスにもすり寄っていたっけなぁ? あいつ鈍感すぎて全然解ってなかったんで、逆に面白かったぜ」

「う、うるさいっ!」

「それによぉ、オーデンに裸なんか拝ませたって、こいつのモノはぴくりとも動かねーよ。こいつは……『女』じゃダメだからよ」


「え……?」

「リ、リーチェ……ぐふぅっ!」

「ほーら、こうやって『男』に蹴り入れられたりすんのが好きなんだよな? こんなでかい図体して『入れて』欲しいんだよなぁ?」


「や、……やめ……うっくっ」

「嘘……し、信じられない……っ!」


「おまえも、こいつも、あのマグレットも、俺の言いなりになるから『使って』やってたんだぜ? ニルエスみたいに全く食指の動かねぇ奴もいるが……ま、あいつはいつ殺してもいいし」

「はぁっ、はぁっ……リーチェスぅ……」

「うるせぇ! おめーも俺に構われなくなって、ガイエスに手ぇ出しかけてたもんなぁ? ガイエスの奴だって、もう少し頭のいい奴かと思って仲閒にしてやったのに、期待はずれでくだらねぇくそ餓鬼だったぜ。しかも魔法が全然効かなくてムカつくったら!」

「……や、やめてっ、痛いっ!」


「おまえ等もムカつく。もう、要らねぇ」


どんっ!


「え……?」

「はやくっ! 今のうちに!」

「てっ、てめぇっ、ニルエ……」


「今のうちに逃げよう! このままじゃ、全員リーチェスに殺される!」

「待って! 契約書……隷属の契約書が……!」

「これだろ? ほらっオーデンのも!」


「き、きさまら、絶対に殺して……や……」


「早くっ!」


(何もかも全部リーチェスのせいだ! こいつが俺の『暗示』から外れやがったから……でも、どうして、魔法が弱まったんだ? ガイエスを嫌わせるのは、成功していたのに!)

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