第4話 強力な方陣を捜せ-1

 無事に依頼を完遂し、幾ばくかの金を手に入れた。

 あれからは、魔獣が襲って来なくてよかった……

 その後もいくつかの依頼をこなし、やっと旅の資金が貯まってきた。

 セイストの町に戻った俺は、手近な食堂で昼飯を食いながら今後のことを考えていた。


 さて、どうやって、何処の迷宮を目指すか……

 単独制覇できる迷宮となると、かなり限られている。

 あまり大きい迷宮は、まだ全然力も魔法も及ばないから無理だ。

 かといって、小さ過ぎてはなんの足しにもならないクズしか出てこないだろう。


 迷宮はガエスタにもいくつかあるが、この国のものはとても古く、強大な魔獣が多い。

 いくつかの連団で、共闘して踏破するような迷宮ばかりだ。

 そして迷宮というものは全て、踏破し『核』を取り除くと崩れて砂になりこの国を埋めていく。

 ガエスタの国土の六割は、そうしてできた砂漠に覆われている。


 人の多く住む北側は、アーサス教国と国境を接している。

 国境近くに町や村が多く固まっているが、南側からの砂漠に追われて集まってしまっただけだ。

 決して暮らしやすい訳ではない。

 そして、今、その国境沿いで戦が起ころうとしている。


 特殊な鉱石が採れるアーサス教国は、ガエスタよりは豊かで安定した国と言われている。

 まぁ、大陸で一番平和で豊かなのはイグロスト皇国なのだが、皇国はあまりに他の国々と違いすぎる。

 魔力量が信じられないくらいに多い貴族達が国全体に防護結界を張り、もしもの時のために強大な魔法を準備しているという。


 あの広い国土全てを覆うことのできるほどの魔法に守られている国と、その他の大して魔力量のない者しかいない国々では比べることなどできない。

 そのせいか、イグロスト皇国には迷宮が全くないのだ。

 あの国は、成功した冒険者達が移住して、悠々自適に余生を過ごす……そんな夢を見る国なのだ。


 俺が入れる迷宮があるとすれば……北方の小国が集まってできた、ストレステ共和国だろう。

『迷宮国』とも呼ばれているあの国では、新しい迷宮が次々生まれていると言う。

 強大になり過ぎないように、なかなか踏破されない迷宮があると国が『衛兵団』を差し向けて潰してしまうのだそうだ。


 だが衛兵団は『迷宮品の魔具』を取らず、またその地に新しく迷宮を『育てる』のだという。

 迷宮を産業にし、冒険者を呼び寄せて踏破させる。

 冒険者達は迷宮を『娯楽』にできて、国土の三割以上を凍土に覆われて碌に作物の育たないストレステに金を落としていくのだ。

 迷宮で稼ぐのは、冒険者だけではない……ということだ。

 そんな国だから大小様々な迷宮があり、単独で挑んでいる者も少なくないと聞く。


 よし、目的地はストレステ共和国だ。

 アーサス教国の東、イグロスト皇国の北東……ここガエスタからはかなり距離がある。

 陸路か海路か……その辺は、今後の稼ぎ次第だな。



 とにかく、まず必要なのは攻撃魔法が使える方陣である。

【方陣魔法】以外だと【収納魔法】だけである俺には、現在全く攻撃系の魔法がない。

 俺が持っているもので使える方陣は『強化』『回復』『治癒』『浄化』『灯火』『採光』『清水』……

 連団にいる頃は『方陣は弱くて役に立たない』と言うオーデンの持論もあったし、俺に新しく方陣を買う余裕もなかった。


 今持っているものは、どれも旅をするのには便利なものばかりだが、全く攻撃向きではない。

 俺の持っている技能的に、攻撃に使えそうな方陣は『土塊』か『火炎』だろう。

 補助できる技能がない方陣だと、より多くの魔力が必要になる。

 すぐに発動準備できるものも、数は限られる。


「まずは、この町で売っている方陣があるかどうか、だな」


 よし、魔具屋に行ってみるか!

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