第2.5話
「馬車ってやっぱ快適」
「なんで今まで、歩いてばっかりだったのよ?」
「ガイエスが変に正義漢ぶって『借りる』のも嫌がってたからな」
「足を引っ張るしかなかったってのに、一年近くも一緒にいてあげたあたし達って心が広いわよね」
「本当だよ、もう少しくらい役に立つと思っていたのに、剣も魔法も全然だった」
「ニルエスより、魔法が使えねぇなんて思わなかったからな」
「お、俺は使えないんじゃない! 向いてないってだけで……」
「だが……始末した方が、よかったんじゃないのか?」
「連団にいるうちに殺したらこっちが調べられたり、疑われるわ」
「マグレットの言うとおりだ。契約がなくなっちまえば何してもいいが、俺達が足止めくうことには変わりねぇ」
「あたしの作戦ではあの男を殺す予定だったのに、なんでちゃんととどめを刺さなかったのよ、オーデン」
「俺が止めたんだよ。あいつは銀段二位だった。ガイエスに『殺せる』ほどの腕がないって判ってるのに、殺っちまったらあいつが犯人だって言っても信じてもらえねぇからな」
「流石、リーチェスだわ。思慮深いのね」
「んー? そぉかぁ?」
「おいっ! 砂魔虫だ!」
「ナスティ、炎魔法!」
「わかってるわっ! えーいっ!」
「なんだよ、全然届かねぇじゃねぇか! 本気でやれよ!」
「きゃあっ!」
「くそっ、幌の中に……!」
ざしゅっ!
「馬鹿、リーチェス! 何してるのよ、馬を斬るなんて!」
「こいつに集ってる間に逃げるんだよ! もうすぐローエスの町だ!」
「そうだな、やむを得まい!」
「待ってよ、荷物も……」
「置いていけっ、そんなもん!」
「だってこれには……」
「なら、ここで死ね!」
「はぁ、はぁ、はぁ……なんとか、逃げられたか」
「ナスティがちゃんとしないからよ!」
「煩いわね! あんただって炎魔法くらい出せるでしょうっ! なんであたしにだけやらせるのよ!」
「あたしは回復役よ? もしもの時に、誰が助けてやると思ってるのよ」
「マグレット、ちょっと回復かけてくれ。砂で足をやられちまった」
「まぁ! 今すぐに治すわ、リーチェス……あら……? なんか、魔法が……」
「おいっ、なんだよ、いつもみたいにぱぱっとやれよ」
「え、ええ…………どう?」
「ああ……まあ、いいか」
「立ち止まっていては危ない。歩くぞ。こんな所で夜明かしはできん」
「……おかしいわ、今まであれくらい簡単に焼き落とせたのに……」
「おまえ、魔法しか取り柄がねぇんだからちゃんとしろよな、ナスティ」
「な、何よ、リーチェスが剣で斬り落とせばよかったでしょっ!」
「剣で斬ったら、毒の血が吹き飛ぶだろうが! 魔虫類は焼くってのが常識なんだよ!」
「そうよ、ナスティが自分の役割をちゃんと全うできなかっただけでしょう?」
「……ムカつく……」
「次の『廃棄』あんたじゃないといいわね? ナスティ」
「……!」
「もういいだろう。早く行こう、暗くなっちまうよ」
「そうだな。ナスティ、行くぞ」
「……ええ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます