第33話

 アルミーレ王国。

 既に失われた記録……過去に魔王を封印した勇者が作り小国。

 長き時を得て超大国として君臨するようになったその国の始まりの土地が消滅する。


「……ッ!?これは……ッ!」

 

 消滅した土地。

 その代わりに姿を表したのは巨大な緑色の水晶。


「ひゅー」

 

 僕は大きく息を吐き、異空間収納から己の魔力を増幅してくれる魔道具を大量に取り出す。

 

「……」

 

 己の限界を遥かに超越する膨大な魔力を持って、各地に予め仕込んでいた魔法陣へと魔力を流し込み、一つの魔法陣を起動させていく。


「こ、これ……は!?一体何をッ!?!?」

 

 ラーニャが理解出来ないと言わんばかりに大きな声で叫び、動揺を顕にする。


「黙ってみていろ」


 珍しく、まだ幼かった頃のように取り乱しているラーニャを見ながら、僕は口を開く。


「見ろ。魔王様の復活だ」

 

 僕史上、魔力が最も高まる。

 膨大な魔力が、僕の周りに渦巻くあまりにも膨大すぎる魔力が空間を歪める。


「神話再誕」


 己の体が焼きちぎれていくのを感じながら、魔力を操作し、一つの方向性へとまとめ上げる。

 

「北欧神話」


 たった一つの魔法が完成する。


「大いなる災厄を予言し天空の大狩猟団」

 

 ただ一つのみで万物を破壊する大いなる雷が何万と群れをなし、世界を覆い尽くし、荒々しい荒野へとその姿を変えんと、迸る。

 幾数万もの雷はその姿を巨大な長槍へと変え、天空に絡みつく大量の蛇を模した跡を残す。

 

「……」

 

 崩れていく。

 聖剣の力を全て引き出した勇者の作った魔法の封印が。


「こ、こんな……」


 緑色の水晶へと広がる巨大な亀裂。

 際限なく大きくなっていく亀裂から膨大な黒い魔力が溢れ出していく。

 側にいるだけで震えるような……魔王様の持つあまりにも膨大すぎる魔力が。

 ……全く。凡人でしかない僕にとって羨ましい限りだよね。本当に。


「……ふー」

 

 緑色の水晶が完全に砕け散り、何もなくなった遥か地下。

 岩盤に佇む一つの小さな影。


「魔王様復活」

 

 それは間違えなく遥か過去に封印されし魔王そのものだった。

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