第30話
十字架に吊るされているアリエス。
その姿は痛ましいの一言に尽きた。
四肢は砕け、血が滴り落ち、その表情は真っ赤に染めっている。これ以上痛ましい姿はない。
「……ッ。な、何が……」
その痛々しい姿を前にアレナは口元を抑えて呻く。
「ひどい……こ、こんなん……到底許されるこっちゃあらへん……」
「……」
僕は沈黙を保ったまま、無言で視線を上へと向ける。
「……全く。何をしたのか。僕には到底考えつかないね」
アレナに向けていない僕の一言。
「くくく……流石は今代最も優秀なお方だ。とてもじゃないが平民とは思えない」
そんな僕の言葉に対して言葉の返答が帰ってくる。
「……ッ!?!?」
僕の言葉に対して帰ってきた言葉。
言葉を返してきた男……魔族が一人。
魔族の中でも上位の力を持っている存在、上位魔族。
この教会の天井に貼り付いていた上位魔族である男は僕とアレナの元へと降り立ってくる。
「い、一体何者や!?」
「何も知らぬ道化は黙っているといい」
上位魔族はアレナを一瞥するだけで黙らせて見せる。上位魔族としての圧倒的なまでの力を見せつける。
「くくく……知らずに保護していたわけではないでしょう?その少女が……魔王様復活の鍵であると。だからこそこうしてその少女を保護し、己の守りの中へと入れた……」
「……」
僕は上位魔族の言葉に対して無言を貫き通し続ける。
知らないのだ。
僕という存在を。人の身でありながら、魔族よりも強く、魔族よりも影響力を持ち、魔王復活に大きな貢献をしている僕のことを。
そして、誰も知らないのだ。僕の計画を。
「だがしかし!!!貴様は我ら上位魔族の力を侮った!あの程度の守りを破るなど……造作もないッ!貴様は失敗したのだッ!!!」
饒舌に語り続ける上位魔族の男。
そして、この教会全体が大きな魔力に包まれ、巨大な魔法陣の一柱となる。
この巨大な魔法陣の一角……ここ以外にも4つほどの一柱がたてられている。
「さぁ!!!見よッ!我らが魔王様復活のときをッ!!!」
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