第20話

 魔族の手によって騎士が壊滅した。

 その事実は人類全体を驚愕と恐怖に震わせ、大きな波紋を呼んだ。


「……」

 

 民衆たちの暴動は更に激しさを増していき……諸外国の動きも活発になっていく。

 未だに諸外国はアルミーレ王国に牙を向けるような動くは見せていないが、それもいつまで続くかわからない。

 そんな状況だと言っていいだろう。

 多くの村が壊滅し、騎士が魔族を相手に壊滅した。これ以上ないまでに弱体化しているのだから。

 そして、その弱体化はますます進んでいくだろう。


 現在も魔族による村の襲撃。

 そして、魔族を討伐するために派遣している騎士は全て返り討ちにあっているのだ。

 王国によって派遣された騎士から一貴族が派遣した騎士まで。

 冒険者や傭兵にも依頼を出しているが、全て失敗に終わっている。


「ふわぁ」

 

 そんな中で、学校がまともに機能するわけもなかった。先生の多くが魔族との戦いのために駆り出され、生徒である貴族の子供たちも一部家へと強制帰還させられているのだ。


「暇だな」


「せやな」


「だな」


 暇だと呟いた僕の一言にレミアとアレナの同意の言葉が重なる


「うぅ……気楽でいいわね」

 

 そんな僕たちに対してテレシアの非難するような視線が突き刺さる。

 公爵令嬢であるテレシアは結構忙しいのである。


「というか、アレナは忙しくないの?商人も今大変でしょ?」


「あぁ……うちのとこは平気なんやで。そもそも本拠地がここちゃうさかいね。民衆からの顰蹙を買わへんように少し赤字でも今まで通りの値段で食料品を売り、武器防具やら、貴族と騎士に売れるような商品を高値で売りさばいてるさかいね。怒りを買わへんで利益を得る。これが一番やな。こうしてるおかげでうちの商会は一度も襲撃を受けてへんのやで」

 

 アレナの言葉。


「ちょっと本当にお願いだから高値で武器とか防具とか売るのやめてもらえないかしら?騎士たちの遠征用の食料って言った瞬間に値段が5倍くらいになったんだけど」


「そら知らん。どうせお金なんて持ってるさかいええやん?」


「結構ギリギリなんだけど……」

 

「「「「……ッ!?!?」」」」


 辟易としたテレシアの話と、商魂たくましいアレナの話を聞いていたその時。


 ドンッ!!!

 

 遠く、いや、かなり近くのところから急激な魔力の膨れ上がりと共に、大きな爆発音が聞こえてきた。

 おそらく、学園内部で起こった出来事であろう。


「な、何がッ!?」


「何が起こっているさかい!?」


「キャッ!」


「とりあえず言ってみようか」

 

 僕たちは爆発の起きたところに向かって歩き始めた。

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