第8話
『 』の『 』、子羊、アリエス。
その存在の誕生とラーニャとテレシアの怨念にかかりつけになり、彼は冒険者として各地に出向くことがなくなってしまった。
魔に、闇に、人類を脅かす敵に立ち向かう勇者は居なくなってしまった。
マキナの思い通りに。
「クッ!な、何者だッ!?この私が皇太子だとわかっての行いか!?」
「当たり前だろう。我らを何だと思っている」
多くの護衛に守られた馬車。
そこに数人の襲撃者が姿を現す。
数人の襲撃者
その頭には悪魔のような角が生え、背中には巨大な翼を携えている。そして、その額には一つの宝石がはめ込まれていた。
間違いない。
襲撃者のその姿は、伝説の中で語られている魔族の姿で間違えなかった。
「そ、そんな……ッ!?魔族!?」
伝説を知るアルミーレ王国の皇太子は顔を引き攣らせ、驚愕に震える声をあげる。
「そう、か……!全て!全てお前ら魔族の仕業であるなッ!?全てッ!ヌゥッ!」
今、この国では多くの事件が起こっている。
そして、その事件の数々の首謀者が今、目の前にいる魔族たちだと目星をつけた皇太子は怒りに自分の体を震わせ、立ち上がらんと己を奮い立たせる。
これ以上多くの事件を起こさせないために。民衆の生活を守るために。
皇太子は、アルミーレ王国の歴史を見てもかなり優秀で、民への愛にあふれる素晴らしき人物であった。
既に護衛のほとんどが数人の魔族によって殺されている。
彼が、皇太子自ら戦う必要がある。……一国を背負し未来を持つ男は決して弱くはない。
「無駄だ」
皇太子の首が魔族の手に握られている剣によって両断される。
しかし、相手が悪かった。
相手は伝説上の、人類の歴史上唯一。人類を食物連鎖の頂点から引きずり下ろしかけた種族なのだ。
平和ボケした国家の皇太子程度、簡単に殺されてしまった。
「良し。これで終わり」
魔族たちは皇太子の死を確認し、撤退していく。
主人公不在の中、物語は進んでいく。加速する。最悪の未来へと。
「クソ……。俺は何も……!ただ死んだふりをしていることしか……!」
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