第19話
2日。
特にやることも、目新しいものもないこの田舎に置いて時間が経つのは一瞬だった。
「今日、もう帰るのね……」
「うん。そうなるかな」
僕はお母さんの言葉に頷く。
既にときは双極の太陽が沈み、空が朱色に彩られている夕方。
僕が帰宅する時間まで後少しである。
「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううううううううううううううう」
レーニャは既に瞳に涙を浮かべ、半分泣いているような状態だ。
「寂しくなるなぁ」
「あぁ。そうだな。王都の……代官立カル学園?ってところでも頑張れよ」
「王立カルド学園ね」
代官立って何だし。王バチギレ。国バチギレ。
「次はいつ頃帰ってくるんだ?」
「んー。夏休み頃になるだろうから、夏かな」
「おぉー。夏か。ちょっと遠いな」
夏に帰れなくなる可能性すらある。
基本的にゲームのイベントは一年生の間に全て行われる。
魔族の動きを勇者であるレミアが動かない以上、魔族たちの計画は前倒しで完遂されることになるだろうし、夏休みにイベントが重なりに重なってそのまま忙しくなり、村の方に行くことが出来なくなる可能性もある。
「うぅ……しばらくマキナに会えない」
レーニャのテンションが目に見えて下がる。
「もう……本当に仕方ないんだから。そんなに付きまとっているとウザがられるわよ……?」
「良いの。良いの。うちの子ってば誰とも関わろうとしないし、村の子供たちとも距離があるから、これくらいグイグイ来たほうが親としてはありがたいわ。……ほら。夕食出来たわよ」
「ありがと。マキナが帰ったとはしばらく私が作るわ」
「ありがと」
テーブルの上に料理が並んでいく。
「じゃあ、食べましょうか」
この世界に食事を食べる前に言う『いただきます』を言う習慣はない。
僕たちは美味しくご飯を食べ始めた。
■■■■■
「ふー」
夕食を食べ終わった後。
「ね、ねぇ……」
僕はレーニャに服の裾を引っ張られる。
「ん……?何?」
「ちょっと、さ。外の方で話せないかな?……マキナがまた行っちゃう前に」
レーニャはその指で既に暗くなりつつある外を指さして告げた。
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