第二章

プロローグ

「ったく……なんでお前のような平民がッ!薄汚れた存在がァ!」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


「アッハッハッハッハッハッハ!」


「無様だなぁ!そうだよ!それが正しい姿なんだよ!」


 大勢が一人の少年を囲み、暴力を振るい、暴言を吐き散らす。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 それに対して少年が出来るのは命乞いだけ。

 ただただ一心に謝罪の言葉を口にし続ける。壊れた機械のように。

 うん。うん。良かった……ゲーム通りだ。

 

「何しているんだよ」

 

 僕はいじめの現場に近づいていく。


「……ッ!?」

 

 少年をいじめていた貴族である彼らは僕を見てその表情を大きく歪ませる。


「いじめは駄目だよ?なぁ」


 僕はいじめを行っていた彼らへと威圧するように、ゆっくりと近づいていく。 


「ちっ……」


 彼らは舌打ちを残し、足早にこの場から立ち去っていく。

 びっくりするくらい恐れられている第二王女殿下の威を借る僕。

 彼らには、そんな僕に対して反抗する勇気はないようだった。


「大丈夫?」

 

 僕は少年の方に視線を送る。

 少年。

 『禁忌ノ哭ク頃に』の主人公であり、勇者の素質を持っている平民である少年。

 彼は己の身分が平民という理由でいじめられているのである。ゲームでもそうだった。

 『禁忌ノ哭ク頃に』の最初のシーンはいじめられている主人公をヒロインである少女が助けるところから物語が始まるのである。


「あっ……」

 

 僕はいじめられていた少年へと手を差し伸ばす。


「大丈夫。僕は君に対して害を与える存在ではないよ。だから、安心して」

 

 呆然としている少年の手を掴んで強引に立たせ、傷だらけの体を癒やす回復魔法をかけてあげる。


「これでよし。数少ない平民。それも。ただ二人だけの商家の人間ではない平民なんだ。仲良くしようね」

 

 僕は少年に背を向ける。


「まだいじめられるようなことがあったらいつでも助けを求めてきてくれていいからね」


 呆然としている少年を残し、僕はこの場から立ち去った。

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