第53話

「これ、死んじゃいそうだな」

 

 巨像から力を受け取っているテレシアを見て僕はボソリと呟く。

 現在テレシアは自分の身に余る膨大な魔力を受け取っているので、このままだとボンッ!って爆発してしまいそうである。

 

 そういえばゲームだとテレシアはお亡くなりになっていたな。影が薄かったから忘れていたわ。


「流石にこのまま死んじゃうのは可哀相かな」


 僕はテレシアの元へと近寄り、その体に己の手を伸ばす。


「……落ち着いて。僕にその体を預けて」

 

 眠り、暗闇に染まっているテレシアの意識へと干渉していく。


「ん……マキナぁ」


「うん。僕はここにいるよ」

 

 暗闇へと堕ち、精神的に弱っているテレシアの精神に働きかけ、希望を持てるようにしてあげる。


「ふー」

 

 僕はアレナの体へと自分の魔力を流し込み、彼女の中にある膨大なテレシアのモノとは違う魔力へと干渉していく。


「……」

 

 未だに流し込まれ続けている膨大な魔力。

 それを操作し、僕という存在を介して外へと排出していく。


 ピシッ……パシッ……バチッ 

 

 外へと排出されていく膨大な魔力は空間を捻じ曲げ、絶対に空間から聞こえてきちゃいけない音を漏らさせる。


「ほいしょっ……とッ!」

  

 テレシアの体を蝕んでいる膨大な魔力を強引に外へと引き剥がす。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 自分の体から膨大な魔力がごっそりと引き抜かれたテレシアの体が大きくバグり、大きな悲鳴を上げる。

 アレナの体と巨像の体を覆っていた光が消滅する。


「これでよし」

 

 僕は絶叫するテレシアから視線を外し、宙へと視線を向ける。

 テレシアより引きぬかれた魔力が轟き、一つの塊へとなりつつある魔力を。


「あっ……あっ……あっ……」


 ほんの僅かな意識のみを残したテレシアがか細い声を上げて、己の手を僕の方へと伸ばしてくる。

 その視線は何もない空間に渦巻いている魔力の塊へと固定されている。


「大丈夫。あとは僕に任せて」

 

 僕はテレシアを安心させるように呟き、徐々に実体化し一つの存在へと昇華されつつある魔力の塊を眺めた。

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