第29話

 各々が自己紹介を始める。

 全員が自分の爵位、得意な戦闘、使える魔法などを敬語でなく自然な言葉で話して、自分の自己紹介を終える。


「僕の名前はマキナと申します。名もないような辺境の村出身の人間です。賤しき身分の身ですが、仲良くしてくださると幸いです」

 

 そんな中、僕の自己紹介はこれだけだ。

 このクラスは成績優秀者が集められたクラスであり、平民なのは僕とアレナ……それと大商会の御曹司と令嬢。

 その四人だけだった。

 他の三人では商会という自分の押しポイントがあるから良いが、僕には何もない。僕はただの辺境の村の男でしかないのだから当然だ。

 

 貴族が多いこの場所で自己紹介を行うのであれば自分をこれくらい卑下した方が良いだろう。

 

「この学園では全ての身分の者が我が校の名のもとに平等だ。自分を卑下する必要はない」

 

 自分を卑下するような発言を行う僕に対してガイア先生が一言告げる。


「参考にさせてもらいます」

 

 しかし、これに従うのは愚策も愚策。

 身分が平等など……ただのお飾りルールでしかない。

 

 僕の自己紹介の後も自己紹介は続いていく。

 そして、最後に自己紹介を行うのは第二王女殿下である。


「ラーニャ」

 

 第二王女殿下の自己紹介はたった一言。


「いや、流石に短すぎる。自己紹介はしっかりと行え」


「それだけで十分でしょう。私のことを知らぬ者など居ないでしょうから」

 

 第二王女殿下は不遜な態度で一言告げる。

 その一言はどこまで言っても正しかった。


「……まぁ、良い。クラスメートと過ごす時間は必ずあなたの中に残る物となるはずだ。誰かと交流することの大切さも学ぶと良い」

 

 ガイア先生は絶対的な存在感を放つ第二王女殿下を前にしても一切動揺せずに、己の意見を押し通し、上から目線で物を告げる。

 教師としては当然の行いであるが、これを出来る者は少ないだろう。

  

「さて、と。今日は初日ということもあり、配らなくてはいけないものが多くある。時間もあまりない。テキパキ動いてもらうぞ」

  

 ガイア先生は声を張り上げた。

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