第17話

「いやぁー筆記試験ややこしかったなぁ……満点取りたかってんけど。無理やなぁ。数学の最後の問題やら全然わからへんかったで」


「あぁ……最後の問題とか鬼畜だったよね」

 

 数学の最後の試験で出てきたのはフェルマーの最終定理だった。

 僕が遊びで解答を覚えていなかったら答えることができなかったと思う。書くのめっちゃ大変だった。 


「あれ、絶対学園側も答えわかっていないと思う」


「せやな。あんなん白紙で提出するしかあらへん」


「僕は解いたけど」


「うへぇ!?怪物やんけ」

 

 僕とアレナは雑談しながら、街の中を進んでいく。


「あ、着いた。ここやで」

 

 アレナは所謂高級宿の前に立ち止まり、それを指す。


「え……?ここ?」

 

 僕は高級宿を見て呆然と驚いたように見せる。


「せや。うちの家の商家はまだ出来て日ぃ浅いけど、そやかておっきな規模を誇る商会なんやで!いずれ名だたる大商会と肩を並べることになるんや!そんなうちらの宿屋やねんさかい、これくらい豪華に決まっとるやないか?」

 

 アレナは自信満々にそう話し、僕の手を引っばって中へと入ろうとする。


「いや!?こんなところで僕なんかが役にたてるとは到底思えないんだけど!?」


「別にそないに気にする必要はあらへんで。うちから誘うたわけやしね。遠慮せんでええで。堂々としとってや。むしろ萎縮してる方がダサいで。ほら!来る!」

 

「えっ……あっ、ちょっ……」


「ほら、けったいな抵抗せえへんで!」

 

 僕はアレナに引きずられて商会の中へと入っていった。

 

 ■■■■■


「……」

 

 アルファはただただ呆然と眺める。

 何を?

 高級宿は自分の身に余るからと辞退したマキナが自分以外の女と一緒にその高級宿に入っていくのを。


「……」

 

 アルファはただただ呆然と眺める。

 何を?

 宿屋へと入るその直前、アルファの方を向き、ぺろりと一瞬舌を出したマキナを。


「えぇ……」

 

 アルファはポツリとつぶやく。


「これは聡明なるマキナ様の策の一つでしょう私が嫌でしたというわけではないでしょうそんなはずはないでしょうからありえませんからはいそもそもあれは学園の受験生のようですしあの方についていくのは不自然なことにならないですからえぇ何もおかしなことではありません至極当然のことです当たり前のことおかしなことはなにもないえぇ当然のことであり何も疑問に思うことではない当然のこと当たり前のこと別におかしくない何も疑問に思うところなんてない私の仕事ぶりが駄目なわけではないマキナ様にだって褒めてもらっているえぇだから大丈夫なのです」

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