第10話

「……ふわぁ」

 

 僕を木の葉の間から差し込む双極の太陽の光が照らす。


「マキナぁー」

 

 木の下で涼んでいる僕に向けられる妙に間延びした甘ったるい声。


「……レーニャか」

 

 僕は倒していた体をゆっくりと持ち上げて、こっちの方に向かってくるレーニャの方へと向かってくる。

 そこにいるのはあの運命の日から大きく成長したレーニャの姿。

 短かった赤髪は腰まで伸びて、全体的に女の子らしくなっている。

 ……いや、なりすぎていると言っても良い。

 

 ちなみにおっぱいは14歳とはとても思えないまでにたゆんたゆんである。大きなメロンが二つついている。

 

「明日、行っちゃうの?」


「うん。そうだね」

 

 僕は寂しそうなレーニャの声に頷く。

 

 運命の日。僕の全てが変わったあの日。

 僕は禁忌ノ哭ク頃の世界に転生したとわかったあの日。


 あの日から5年。

 僕は12歳となっていた。

 今まではこの村から出ずに行動をしていたわけだが、そろそろこの村を出ることになる。

 その理由は簡単で、ゲームの舞台になっているこの国の王都に建てられている学園に入学するためだ。


 魔王様を助けて、幸せにするにはゲームのシナリオにもガッツリと介入しなくてはいけなくなるだろう。

 こんな辺境の辺境の村でゲームのシナリオに介入するなんて不可能な話だ。

 だから僕はこの村を出ていくのだ。


「そう……」

 

 頷いた僕に対してレーニャはしょぼんと落ち込む。

 ビョンと跳ねているアホ毛も、いつもは張りのあるおっぱいもしょんぼりしている。


「……もっとマキナと一緒に居たい……」


「すまないな」

 

 僕はマキナの頭を撫でる。


「んぅー」

 

 全てを犠牲にして強くなろうとした僕の後をいつもついてきたマキナは僕の中で妹のような存在となっていた。

 

「ちょいちょい帰ってくるよ。だから、我慢してくれ」

 

「約束だからね!絶対に帰ってきてね!毎日来てね!」


「いや……毎日はちょっと厳しいかなぁ……」


「えぇ!?なんでぇー」

 

「結構距離あるからね……王都とこの村」

 

 転移魔法とかないからね。この世界。

 そう簡単にホイホイと帰ってこれるわけではない。

 

 さて、と。

 そろそろ村の連中に挨拶参りに行かないとな。

 閉鎖的な村だと近所付き合いが最も重要なとなる。

 村を出るならば、それ相応の対応を行う必要がある。……村を出るのに必要な行動とか意味不明だけどね。

 謎々の謎である。


「あ。僕はこれから挨拶参りに行くけどついてくる」


「うん!ついていくよ!どこまでも!」

 

 マキナは百点満点の笑顔を浮かべて僕の後を追いかけてきた。

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