紫陽花の枝に氷花を結ぶ
藤泉都理
かまくら
「ここに大きなかまくらがあったのに」
雪はまだらに低く積もっており、面積はあらわになっている土と同じくらいだった。
(あんなに高く、地面なんて見えないくらい積もっていたのに)
正直、あの日々が現実だったのか。
わからない。
夢だったのだと強く言われてしまえば、そうなのかもしれないとつい頷いてしまいそうなほどに、あわく、もろい思い出だった。
けれど、夢なのだと断言もできない。
だって、あの雪女の言葉が今もいろどり鮮やかにここに残っている。
それに、
『申し訳ございません。ひとふゆしか存在できない喫茶店のこのかまくらには、雪女や氷狼など、雪や氷が成分の冷たい生物しか入れないのですが』
幼い頃の俺は言ったんだ。
家に帰りたくなくて。
つとめて無表情に。
冷たい心の持ち主ですがいけませんか。と。
(2022.5.23)
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