第7話 好事間男筆おろしNTR。

 好事魔多し。僕が想いを先走らせたところ邪魔が入った。


「ビビアンが上がって来るわ」

 と言って奥方様は大急ぎでドレスを羽織った。

 せっかくのチャンスだったのに。奥方様への想いを遂げる為には、先ずビビアンの目を盗まなければならないんだな。


「あのー奥方様、もうそろそろお休みなさいますか?」

「ちょうど良かったわ。ビビアン、こっちへいらっしゃい」

「はい、奥方様」

 ビビアンはご褒美を期待する犬の様だ。目を爛々とさせている。僕も犬だけど、彼女も犬なんだな。僕の先住犬だ。

「いつもいつも、あなたには苦労を掛けています」

「いえいえ、とんでもございません。奥方様に尽くすことは、私の最大の喜びでございます」

「あなたの日頃の忠勤への御礼に、一献を傾けましょう」

 僕は奥方様が差し出した金杯に葡萄酒をなみなみと注いだ。生前は、こんな気の利いた人間だったのかな?

「私の様な婢女に神々の血など畏れ多いことでございます」

 たぶんビビアンさんは、お酒が苦手なんだな。見た目は未成年ぽいけど、アルコール飲ませて好いのかよ?

「では、これならば如何かしら?」

 奥方様は葡萄酒を口に含んでビビアンに顔を近付けた。ビビアンは恋人に抱かれる乙女の様に、奥方様に身を委ねた。口移しで葡萄酒を飲まされた。ビビアンは喜びのあまり萌え死んでしまった。とても幸せそうな死に顔である。やっぱ美少女なんだな。寝顔も可愛い。

 奥方様は着ていたドレスを再び脱いで、ビビアンに掛けてあげた。ビビアンはムニャムニャ寝言を呟いている。よっぽど酒に弱いんだな。


「ところでビビアンさんは、どういう人なんですか?」

「ビビアンもね、少しだけ私たちと同じ血が流れているのよ。子供の頃に奴隷として売られていたのを、私が買い取って今まで育てて来たの」

「ビビアンさんのことをとても信用している様で、少し距離を置いているみたいですね」

「それは血の濃さの違いね。人間の中ではビビアンを最も信用しているわ。でも、同胞であるお前には及ばないのよ。それにビビアンの考え方は、この国の人間と変わりませんもの」


 奥方様は再び葡萄酒を口に含んだ。今度は僕に顔を近を寄せて来た。僕は大好きな奥方様にファーストキスを捧げることが出来た。すると、金杯を僕の口元に突き付けた。

「今度はお前の番ですよ」

 僕は奥方様に葡萄酒を口移しにした。交互に口移しを繰り返した。そして金杯が空になると、互いに舌を絡め合った。ますます絆が深まった気がした。

 奥方様は小声で囁いた。

「チャルブ、これで私とお前は真の夫婦ですよ。真に愛する夫はお前だけよ♡」

「はい、シフタークーン様、永遠の愛を誓います♡」

 これって三々九度だったのかな?


 そうして僕は奥方様に初めてを捧げた。魔法の貞操帯ケーラリーグのことはすっかり忘れていた。奥方様の中では発動しなかった。夜通し幾度も幾度も熱く愛し合った。


「私が初めての女では無かったのですか?」

「奥方様が初めての女性です。嘘ではありません。嬉しくて嬉しくてナニも思い残すことは有りません」

「うふふ♡……嘘ではないのは判っているわ。でも、あんな恥ずかしいこと、どこで覚えたのかしら?」

「僕は無我夢中でナニも覚えてません……」

 少し嘘をついてしまった。無我夢中だったのは確かである。しかし、生前エロ本やアダルト・ビデオで得た知識を奥方様で試してしまった。でも奥方様の正直な一言は痛かった。

「もう他の男じゃものたりないわ♡」


 こうして、バラ色もとい桃色の異世界生活の一日目が終わったのである。因みに、イフリンジャの国では、一日の終わりは真夜中の午後十二時では無い。日が昇り、夜が明けた時に新しい一日が始まるのである。

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