第1話 セツナとイマ
ある日、流星群が降り注いだ。地上に向かって。あらゆる物を破壊して、災禍は都市一つを包み込んだ。一家団欒にもバイトの最中にも公園で遊ぶ子供達にも平等に降り注いだ。
「今日はお兄ちゃんの誕生日だ!」
「盛大に祝いましょう!」
「うん!」
そんな声も爆炎に飲まれて消えた。見えたのは一筋の光。そこに兄と呼ばれた少年は「憧憬」を見た。
――なんて綺麗な光だろう。僕にもあんな光が使えたらいいのに。
隕石被害は千人規模、都市にも多大なダメージを与えた。しかし、一番深刻だったのは――
「あの子達だろ? 親を隕石で亡くしたっていう」
「可哀想に……」
「引き取り手は?」
「いないらしい」
喧噪を二人の子供を包み込む。うるさい。そう少年は思った。こわい。少女はそう思った。
「かわいそうにかわいそうにかわいそうにかわいそうにかわいそうにかわいそうにかわいそうにかわいそうに」
「うるさい! ぼくたちはかわいそうなんかじゃない!」
雷鳴が轟いた。辺りを電流が流れる。人々の群れが蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。その力は少年から発せられたモノだった。隕石被害に遭った者が例外なく発症した異能症状。アルビノの少年セツナの場合は電気を発するのがソレに該当した。そしてセツナの影に隠れる兄と同じアルビノの血を引く少女イマ、彼女にも異能はあった。
「う……ぐぁ」
「あのひと、しんじゃう」
セツナの電流にやられた人に歩み寄り手を触れる。すると一瞬の瞬きと共にその人物の雷撃による火傷は癒えていた。イマの異能はどんな傷でも癒す事が出来る。助けられた男は一言。
「近寄るな怪物がっ!」
そう言って逃げ出した。イマは涙を浮かべてセツナへと寄って行った。
「おにいちゃん……」
「きにするな、これからはおれたちだけでいきていくんだ」
幼子にそんな事出来るわけがなかった。すぐさま、数日経たないうちに『保護』が来た。
「ツクヨミ財団より来ました。イマさん、貴女をお連れしに」
「おい、おれは!?」
「お兄さんのセツナさんですね、貴方は心因性現実希釈症候群に罹患していないようなので」
「なにわけわかんねぇこといってるんだ!!」
雷撃が飛ぶ、しかし。
「リキ」
「チッ」
リキと呼ばれた赤髪の少年は一歩前に出ると腕を無造作に振るった。
炎が辺り一面を包んだ。セツナとイマが炎の壁で分断される。炎の壁は電流を通さない。
「イマ! イマぁ!」
「おにいちゃん! たすけて!」
「いまたすける! まってろ! くそ! どけ! なんで、でんきがきかないんだ!」
「お前と俺じゃレベルが違い過ぎるって事だよ小便小僧」
イマの助けを呼ぶ声が遠ざかっていく。届かない、炎が酸素を奪っていく。もう終わりだとセツナが思った時、酸欠で眩む視界の中で炎が凍った。
「……え」
「間に合わなかったか!? リィンカーネーションの少女は!?」
「いません! でも」
「ああ、君だね、バイオエレクトロニクスの少年は」
黒い軍服を身に纏った集団、車が何台か、イマの叫びが消えた方向へと走って行く。
「私達は『トラウマ』使いの集団であり、反ツクヨミ財団組織『アラハバキ』、おっとちょっと情報量が子供には多かったかな? でも覚えなくていいよ。君のやるべき事は妹さんを救い出す、それだけだ」
黒髪のゴツイ男がセツナの頭を撫でつける。その手を振り払い、セツナは男を睨みつける。
「ほんとうにたすけられるんだな!?」
「ああ」
「だったらあんたたちのところにいく!」
「だってよ! 決まりだお前ら! 新たなアラハバキに乾杯!」
『乾杯!!』
こうしてセツナはツクヨミ財団と武装集団アラハバキの戦闘に落ちていく、トラウマと呼ばれる力を使って、財団の施設を停電させるのが主任務だった。そんな戦禍の中のセツナの口癖は「イマはどこだ!」だった。
そして――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます