第15話 遥乃と京香 ①
皆斗が仕事を始めて5分ぐらい経った頃。
遥乃は2階にある教科の部屋を訪れていた。
「京香〜、皆斗さん今から仕事するみたいだけど、夕飯どうする?」
部屋の外から声をかけると、程なくして。
「アイツと同じ部屋にならないなら自分でなんとかする」
部屋から出てくると同時に言う京香。
遥乃はその京香の頭をはたく。
スパァン!という音がすると同時に、京香は痛さのあまり頭を抱えて涙目になる。
そのままうずくまった京香をじっと見下ろした遥乃は。
「アイツ、じゃないでしょ。皆斗さん、もしくは北野さん、または管理人さんでしょ。年上に向かってそういう口のきき方をしない」
「だって、アイツ男だ――痛ぁ!」
言われたそばからアイツと口にした京香の頭に、無言かつ手加減なしでカラテチョップを叩き込む遥乃。
「いくらあなたの事情があっても、それ以上は許さないからね。まだそれ続けるって言うならそれ相応の覚悟をしなさい」
「……ごめんなさい」
しゅん、とうなだれる京香。
それを見た遥乃は、腰に手を当ててため息をつく。
「はあ。私がわざわざ夕飯の準備しといたのに、そういう態度なら最後まで手伝うの辞めるわよ?」
「そ、それだけは勘弁して…」
京香は家事、特に炊事は苦手だ。
調理実習ではなるべく彼女にやらせないことが鉄則となっているくらいには苦手。
それを知っている遥乃は、あえてそれを使う。
でないと呼び方が変わらないと判断したからであった。
「だったら呼び方に気ををつけなさい。次やったらもう手伝わないから。……ほら、早くしないとご飯食べるの遅くなるよ?」
立ち止まったままの京香を催促し、台所へと向かう。
そのまま冷蔵庫から皆斗に教わったものを次々と取り出していく。
「京香、そこの黒いお鍋取って」
「はい」
「あと油もちょうだい」
「サラダ油?」
「それ以外にここ油ないでしょ」
「それもそっか。……で、何するの?」
「今から揚げ物するから。結構危ないんだから注意して行動すること。いいね?」
「揚げ物?なんで?」
「なんでってそりゃ、今日の私達の夕飯と同じもの作るからに決まっているでしょうが」
「今日の遥乃さんたちの夕飯?」
「そうよ。私達はメインが唐揚げだったから。せっかくだから仕込みだけしといたのよ」
「よくそれ準備する時間あったね」
京香は呆れながら遥乃に質問を投げかける。
遥乃はこう見えて忙しい方の人であることは、京香ももちろん知っていた。
それに、唐揚げの下準備はものすごい時間を要することも知識として頭に入っていたのだ。
一方の遥乃は、表情にこそ出さないものの、内心ではとても動揺してしまっていたのだった。
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お久しぶりでございます。
本日より、週2での投稿を再開します。
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