第13話 夕食騒動 Part2

 遥乃が後ろからついてくるのを確認しつつ、台所に入る。


「遥乃、とりあえず必要だと思うのを一通り教えておくな」

「うん」

「まずここ、今日の夕飯のやつの作り方がさり気なく置いてある。これはまあ片付け忘れたことにしといてくれ」

「ん、分かった」

「そうか。で、次はこれだ」


 そういって指さしたのは、1つのジッパー。

 中に入っているのは、


「鶏肉?それも味付きの?」

「唐揚げだ」

「へ?」

「だから、唐揚げ。これを揚げるだけで夕飯で食べたアレになる」

「嘘でしょ?」

「嘘じゃない。……京香が食べてもいいし、食べなきゃ明日の俺の胃に吸収されるだけだ」

「そう。……あとは?」

「特にない。……ああ、冷蔵庫の左側の一番上の棚にあるこれ」


 そう言って取り出したのは、青い蓋のタッパー。

 その中身はピンク色だ。


「なにそれ?」

「これがさっきちょろっと話したいちごジャムだ。……明日使うからこれは使用禁止だぞ」

「なるほどね、このタッパーが駄目だと」

「そうだ。じゃああとはよろしく。……京香がキッチンに入るまでは管理人室にいるわ」

「ほーい。じゃあそれも伝えておくね」


 遥乃と別れ、管理人室に戻る。

 管理人室とはいえ、要は自分の仕事部屋である。

 強いて言うなら、ドア一枚隔てた向こう側が警備室で、玄関に隣接した部屋になっている。

 警備室の方は、玄関のところに窓があるため、入居者が帰ってくる頃(=鍵が空いているとき)は、そこで仕事している。

 もうすでに全員の帰宅が完了しており、鍵が閉まっているので、そっちに行く必要はないため、警備室と、つながるドアの鍵を閉める。


 机の上にノートパソコンと、教本をいくつか、それに紙と鉛筆を用意する。

 ダンス部外部講師となった以上、部活関連はできるだけのことをしたい。

 さすがにお金関連は、あくまで”外部”なので関わることが出来ないが、指導などには深く関わってくる。


「えーっと、今度の定期はなんだったっけな〜」


 つぶやきながら取り出したのは、薄めの紙束。

 表紙には、「秋の定期講演 曲目案」と大きく書かれている。

 ペラリとめくると、1枚目には曲のリストがズラリ。

 これで確定させる方針なので、スルーして2枚目以降へ。

 そこに書かれているのは、音源データのリンクと、入れるべきフォーメーション。

 コンテストや大会で問われやすいフォーメーションを網羅しており、これを必ず活用する。


「曲目が、……なんだコレ?まさか今の子達ってアニソンブームでも来てるのか?」


 1枚目に戻って驚く。

 今回は3部構成なようなのだが、問題はそこではない。

 曲である。

 書いてあることを読み上げてみると、こんな感じの流れらしい。


 1部「ヒット・メドレー」

  『怪物』 

  『うっせえわ』 

  『阿修羅ちゃん』 

  『Habit』 


 2部「ボカロ愛を止めるな!」

  『贖罪』with三枚橋学園合唱部

  『チュルリラチュルリラダッダッダ』

  『いーあるふぁんくらぶ』

  『ロストワンの号哭』

  『おどりゃんせ』


 3部「日本人の心はアニソンで出来ている」

  『創聖のアクエリオン』

  『ココロオドル』

  『新時代』

  『ハレ晴レユカイ』


アンコール

  『ラブ☆バケーション』

  『YONA YONA DANCE』



「これを振り付けしろっていうのか?めっちゃ時間かかるぞ、コレ。……そもそもいったいどんだけ踊るんだよ……」


 いくら2・3部だけでよく、youtubeを参考にしていいとは言われても、無理難題である。

 それに気づいた俺は、とんでもない労働時間になることを覚悟するのだった。



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 きつそうですが、でもいけます。

 (だって合間合間にある休憩の時間がものすごく長いから)


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