第55話
越谷レイクタウンは、大きく分けて3つのブロックに分けることができる。
駅側に近いkaze、その奥にあるmori、そしてちょっと離れてアウトレットである。
閉店時間までいても何の問題もないので、全部回るつもりだ。
けれど、ノープランであっちへこっちへふらふら行き過ぎると迷子になるようなレベルの広さと複雑さなので。
「kaze→アウトレット→moriの順で、お昼と夜はすこし遅めに取るでいいんだっけ?」
「それがいいんじゃないかな、ってうちは思うよ?」
「だよね。……よし、そうと決まればまずkazeから行きますか!」
意気揚々と進んでいく俺たち。
まず最初に入ったのは、可愛い系の小物類を中心に扱っているお店だ。
ちらっとみた莉乃の目が、一瞬きらきらっと輝いた後に、興味ないフリをする目に戻る。
その変化を俺は見逃さず、半ば強引に店の中へ。
が。
「うん、見事にカップルと女子集団しかいないのな……」
「でしょうよ。だってこういうところだもん、でもうちと律希もカップル、でしょ?」
「そうだな。堂々としてるか」
「そうだよぉ、律希はもっとどっしり構えていいんだよ?だって、うちはもうぞっこんだしね?」
“ぞっこん”という言葉を強調する莉乃。
その雰囲気があまりのも妖艶で、迂闊にもドキッとしてしまう。
人目のあるショッピングモールだというのに、初っ端からいきなり結構危ないところだった。
と、そんなことを考えている間にも莉乃は店内の物色を始めており。
「ねえねえ律希、これ可愛くない?」
「ん?……おお、マグカップか。まるっこいペンギンって凄く可愛いね」
「そうね。……しずくと楓ちゃんにも買っていこうかな?」
「しずくと楓、か。……だとするとしずくはこっちの猫がいいかもな」
「しずくが?」
「うん。……言いにくいけどさ、しずくってほら、猫みたいに最初はツンツンしてるけど途中からデレッデレじゃん」
「ぷっ。たしかに言うとおりだね?」
「楓はこの可愛いこぶただな。のんびりしてるときのほんわかしたイメージがぴったりだ」
「なるほどねぇ」
「で、俺と莉乃がこのペンギンね」
「そうだね。……ってえぇ!?」
しっかりと頷いたのに、その直後、驚きの声を上げる莉乃。
さながら、サプライズ成功といったところか。
ドッキリ成功みたいな感じになった俺の心の中は、不思議と喜びで満ちていた。
やっぱり、莉乃の嬉しそうな表情はとっても可愛いものがある。
「だってさ、今日は二人で来たわけじゃん?だから記念に俺たち二人はおそろいのにしようよ」
「ふふっ、律希らしいね、その考え。……上側が色んな色で塗られてるんだね」
「どうする?色違いにするでしょ?」
「そうねぇ。……うちはローズピンクにする」
「ふーん。じゃあ俺は……、サファイアブルーにするわ」
マグカップ4つをかごに入れ、店内を進む。
「なにこれ、超可愛い!」
「う〜ん、これふわっふわだしデザインもいい!」
「このもふもふ、可愛いし大きさもちょうどいいし買っちゃお♪」
莉乃はどこからどう見ても完全に電車で持って変えることを忘れており、先程のマグに加え、ぬいぐるみ、シャーペン、パジャマにペンケースまで買っていた。
まだ1店舗目だと言うのにこれである。
一体全体どこまで荷物が増えてしまうのか、そう想像してちょっと恐ろしくなってしまう俺であった。
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ショッピングあるある、荷物が予想より増えまくる(完全に個人の偏見です)。
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