第28話 味方男子

 わずか1人だけいた、生きているどころか無傷の男子。

 そいつは、俺を除くとたった1人だけの攻撃されなかった男子であった。


 逆を言えば、攻撃されたやつは1人残らず倒されてしまったわけだが。


 何事もなかったかのように座っていた彼は、全員がやられたのを確認すると、俺の方に近寄ってくる。


「君は、転校生の律希くんだね。始めまして、僕は石岡蓮だ。よろしく」

「石岡くん、ね。相原です、よろしく」

「蓮でいいよ。キミは川俣さんとお付き合いしているのかな?」

「そうだよ。そういう蓮くんは?」

「僕はね、そこの委員長とお付き合いしてるんだ」


 なんと、このクラスの学級委員長の彼氏だった。

 話を聞けば、これまでこのクラスでは唯一知られている彼女持ちの男だったらしく(というかおそらくこのクラスで1人だけ)、今までさんざん攻撃を受けてきたのだという。

 そのせいで学級委員長が男子に反発、一連の騒動を見ていた女子たちも反発して今に至っているんだとか。

 それでも楓だけは大人しく見守っていたようだが、今日ついににブチギレたというわけだ。


 というわけで、できないかもと思っていた男友達ができたのだった。


 ちなみにこのクラスの学級委員長は。


「ちょっ!なんでバラしちゃうの?」


 俺たちに協力すると言ってきた、女子達の先鋒だった。


「いいじゃないか、どうぜバレるだろうし」

「……そっか、そうだよね」

「「納得した!?」」


 思わぬ方向へ転がる会話に驚かされつつ。


「改めて学級委員長の鳥沢美南です。よろしくね」

「相原律希です。楓の彼氏です。よろしく」

「ん。ところでさ、楓ちゃんに何したの?」

「何したの?」

「そう。だって今まで楓ちゃん怒ったこと無いんだもん。自分が攻撃されても謝るだけだったのに、律希くんのことになるとこんなに怒っているんだよ、絶対になんかあったでしょ?それこそまさか大人の階段を何段も――」

「ちょっと黙ろうか!?あなたはさっきから何を言い出すんですかねぇ!」


 まさかの疑惑をかけられてしまった。

 楓が怒らないっていうのは実はあまり信じられない。

 俺たち4人でいるときは、結構高確率で怒るからだ。

 だいたいはしずくがやらかすか、俺が何かしらやらかすかの二択ではあるんだが、それでも1月に1回くらいは怒られる。

 うち半分以上がしずくではあるが。


 しかし、クラスメイトたちからしたらそれを知らないわけで。

 今日が初めてだったようだ。

 話を聞けば中学校時代からそんな感じだという。

 言われてみれば、学校で怒られたのは屋上くらい、つまり人目のないところ。

 そう考えれば、怒ることを知らない人も多いだろう。


 朝からわけのわからない騒動に巻き込まれたが、カップルを含むたくさんの味方を見つけることができたのだった。

 さらに友人まででき、初日から思わぬほど良い滑り出しだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る