第3話 ちょっと違う学校生活 Part2
「確かに緊張してるかもな」
「そうか。もしかしてアレか、ようやく決心したのか?」
「そう。今日の放課後に頑張ろうと思って」
「はぁ。やっとか、全くほんとに長かったと言うかなんというか。緊張しすぎて逃げるんじゃねぇぞ?」
「もちろん。決めたからには最後までやり通すさ」
康史には今日楓に告白しようとしているのがバレてしまったが、彼の口は非常に硬いので安心できる。
その後も順調に授業が進んでいき、時は流れて昼休み。
「おーい、律希いるか?」
「あ、莉乃姐さん。今日もですか?」
「だから姐さんはやめろってば。もう昔の話だからさ」
そう言いながらお弁当を差し出すのは姉と同い年の浜野莉乃先輩。実は元ヤン総長で、俺が中2の時(姐さんは中3)に姉にぶっ潰された人。
それ以来更生し、今では清楚な生徒会長で皆から慕われる存在なのだが、俺達姉弟と楓と康史だけのときは前の口調が戻ってしまう。
「莉乃さん、お弁当2つってことはいつものやつですか?」
「そうそう、しずくったら手渡しできないから代わりに行ってって毎日言ってくるんだよな。だからアタシが代わりに届けに来てるってわけ」
「よかったら私作ってきましょうか?」
「「楓が手作り弁当!?」」
楓の口から出たその発言に思わず叫ぶ俺と姐さん。
「何よ、なんか文句あるの?」
「いや、楓って作れるの……?」
「作れるわよ。今日だって自分で作ってんだから」
「そうだったのか。でも中身って自分で作ってるんだけどな」
ウチはお世辞にも母さんの料理は決して下手ではないが上手でもない。
一方俺は何故かそういうことは物凄く得意で、料理の担当は俺なのである。
ただし、弁当の詰める作業だけは姉が頑なに譲らないのでそこはやってない。
「じゃあおかずとか分かっちゃってるってこと?」
「それは違うな。夕飯分も含めて一気に作って、そこからセレクトしてもらってるからどれが選ばれてるかはわからないんだ。まあ夕飯分って言っても、お弁当に入れても良さそうな副菜だけだけどね」
ほぇ〜、と感嘆するふたり。
「とりあえず食べません?結構時間無いですよ?」
「そうだな。でも楓ちゃんは作ってこないほうがいいと思うよ。楓ちゃんが作ってくるって分かったらアタシと楓がまちがいなく殺されるから」
「やっぱりそうですか。難しいですね」
「だろ?ほんとこういうことに関してはやたらうるさいからな」
なんで?
なんで楓がお弁当作ってきたら殺されちゃうんだ?
頭の上にはてなマークを上げていると、2人が呆れたようにしてため息をつく。
「なあ、ひょっとしてこいつ超鈍感?」
「そうなんですよ。超がいくつもつくくらいに」
「…なにをいっているのかわからないけど早く食べないと時間来ちゃうよ?」
「そうだな。いい加減食べるとしようか」
食後。
「ごちそうさまでした。姉に今日も良かったって伝えてください」
「今日も良かった、ね。ところでなんか話でもあるのかい?」
「えっと、楓」
「え、私?何?」
「今日の放課後、屋上に来てくれるかな?」
「今日の放課後?じゃあ掃除終わったらすぐ行くでいい?」
「うん。じゃあ今日待ってるから」
「……なるほどな。そういうことか。まあいいや、律希、頑張れよ。しずくにはちゃんと伝えておくから」
「ありがとうございます」
「じゃ、またな」
そう言って去っていく莉乃さん。
楓は普段のように自分の席に戻っていった。
あとは放課後ちゃんと自分の気持ちを伝えるだけ。
俺は緊張しながら午後の授業に望むのだった。
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相原しずく (あいはら しずく、JR横浜線)
律希の1個上の姉。超重度のブラコン。かつて律希が不良の一部にパシられてた時にそのグループごと1人で壊滅させてしまったという凄腕の持ち主。最近は弟に恋をしていることに気づき、必死で隠すあまり冷たく当てってしまっている。なんとか結婚できる方法はないかとありとあらゆる手段を投じている最中。ちなみに当時潰したグループのトップだった莉乃は今では一番の親友(兼、弟との窓口)。
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